《連載:2024衆院選 課題を追う》(2)人口減少 止まらず 人手不足、企業は苦慮
「生まれ育った茨城は好き。でも、全国や世界規模の会社の方がやりたいことができるのでは」。茨城県常総市出身の筑波大3年、飯田基生さん(20)は10月、就職活動に本腰を入れ始めた。就職先で志望するのは、東京都内にある金融系の企業だ。 物価や治安、人の多さなどを考えると、東京での暮らしはあまり前向きになれない。ただ、キャリアを考えた時、「初めから地元で就職するよりも、まずは規模の大きい会社に挑戦してみたい」と夢を抱く。 県の調査では、近年、県内の大学卒業者のうち約6割が県外に就職している。同県つくばみらい市在住、茨城大4年の中村美咲さん(22)は、都内に本社がある洋菓子メーカーへ就職を決めた。業務内容のほかにも休日数や福利厚生、若い人の意見をくみ取ってもらえる社風…。県内での就職も考えたが「総合的に『いいな』と思う会社が東京にあった」と語った。 政府は10月、「新しい地方経済・生活環境創生本部」を設置。人口減少対策や東京一極集中の是正に向け地方創生を加速させる考えを示した。年内に基本的な考えをまとめる方針だ。 県では、県内企業への就職を後押ししようと「UIJターン事業」など、若者の就職促進に取り組む。11月には就職活動前の学生に県内企業を紹介する「業界研究会」を初開催し、県内就職への意欲喚起につなげたい考えだ。 大井川和彦知事は、8月下旬の記者会見で「(2017年9月の)知事就任から最大の課題は人口減少対策」と位置付け、「最終的に、県民一人一人が思い切った活躍ができる社会をつくっていきたい」とする。 国立社会保障・人口問題研究所(東京)によると、茨城県の人口は20年の286万人に対し、50年には224万人まで減少すると予測されている。それに伴い、さまざまな産業で人手不足が懸念される。 「どこの企業も採用は苦労している」。精密部品加工、野上技研(常陸大宮市)の野上哲也専務(53)はこう明かす。長く働いてもらいたいと、茨城県在住の学生の採用に力を注ぐ。だが、大学新卒者を3年間採用できていない。 「地元の学生に会社の情報が届かない」と課題を挙げる。大学内で実施する就活イベントに参加の意欲を示しても、採用実績がある企業が優先されることもあり、参加がかなわないこともあるという。「人手不足は企業、大学、学生のそれぞれの事情があり複雑な問題。産官学の連携が必要ではないか」と語る。 県内外での若者の採用難を受け、関彰商事(筑西市)は外国人材の仲介事業に乗り出している。ベトナムやインドの大学と連携し、企業説明会や就労窓口を設置した。 昨年、ベトナム・ハノイ工科大で開いた説明会には過去最多の約2600人の学生が参加した。働き手を確保するため、海外にも目を向ける。
茨城新聞社