月経症状による労働損失5700億円…“ピル後進国”日本に変化、企業側も動き出す「女性の可能性を潰さない」支援
女性が1ヵ月に平均5日間は悩まされる、月経にまつわる不快症状。日常生活や働き方にまで影響を及ぼし、月経随伴症状などによる労働生産性損失は実に約5,700億円と試算(経済産業省)、社会でも重要な課題のひとつとなっている。そんな中、月経にまつわる諸症状の改善に役立つとして、徐々に認知され服用者が増えているのが低用量ピルだ。まだまだ普及率が低く、「ピル後進国」ともいわれる日本だが、福利厚生に活用する企業も登場。働く女性のつらさに寄り添い、労働生産性にも寄与する取り組みとは? 【写真】長谷川京子「月経カップを誕生日にもらって…」“生理問題”を赤裸々に語る ■「避妊薬」だけではなく「治療薬」として注目、だが日本での利用率はわずか2.9% ピルと聞くと、大半の人が「避妊薬」と答えるのではないだろうか。たしかに、排卵を抑えることからピルには避妊効果があるが、現在、そのメリットとして「避妊」よりも注目を集めているのは、月経にまつわる諸症状を軽減する「治療薬」としての一面だ。 「一般的にピルと呼ばれている『低用量ピル』は、プロゲステロン(黄体ホルモン)とエストロゲン(卵胞ホルモン)という2種類の女性ホルモンを合わせた錠剤で、女性ホルモンのバランスを一定に保てることからPMS(月経前症候群)や生理中のつらい症状を解消・緩和できる薬としても活用されています。世界中で1億人以上の女性が服用しているといわれ、日本でも徐々に認知されてきて、この5~6年で使う人増えて来た印象があります」(クリニックフォア監修医/日本産婦人科学会認定 産婦人科専門医・村田佳菜子氏) 2017年、「なでしこジャパン」のキャプテンとして2011年のW杯優勝を成し遂げた澤穂希が、試合で最大限のパフォーマンスを発揮するために低用量ピルを服用していたと明かした。これが複数のメディアで紹介されたが、それでもまだまだ日本は諸外国に比べ、驚くほど利用率が低いのが現状。国連の発表によると、フランス33.1%、英国26.1%、米国13.7%、タイ19.6%、カンボジア13.7%、ベトナム10.5%の中、日本はわずか2.9%。ピル後進国と言われているのだ。