企業のSNSトラブル、以前は「基本スルー」で収束したが…いまや「即時応戦必須」のツラすぎる実情【弁護士が解説】
近年、多くの企業が活用するSNSアカウント。いまや情報の発信の強力なプラットフォームであり、コミュニケーションや情報共有に欠かせないツールです。しかし、万一悪評が伝播すれば「火消し」は容易ではありません。起業のSNSのトラブルにおける適切な対応について、法的見地から考察します。多くの企業の顧問を務める、山村法律事務所・代表弁護士の山村暢彦氏が解説します。 年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
一般企業にも増えている「SNSトラブル」
近年では、華やかな芸能関係のみならず、ごく普通の一般企業のアカウントにおいても、SNSのトラブルが頻発しています。もともとクチコミによる風評被害という点では、企業としても悩みの種だったのですが、とくに最近では、SNSの発信の重要性が高まったこと、また、インフルエンサーといった非常に発信力の高いアカウントが登場したことが、SNSトラブルに拍車をかけている印象です。 適正活用すれば、リアルとはまた違った楽しいコミュニティになるはずのSNSにおいて、具体的にどのような問題が生じているのか、背景にある法律の考え方とともに見ていきましょう。
風評被害への対処法、かつては「スルー」が基本だったが…
数年前から企業の悩みの種となっているのが、クチコミサイトによる悪評レビューの問題です。弁護士に相談するようなケースでは「サービスや商品が悪く、悪いクチコミを書かれた」というより、「クレーマーに近い無茶苦茶な要求を断ったところ、根も葉もない文句が書かれた」というものが多くあります。 数年前であれば、筆者は下記のように回答していました。 「企業がクチコミひとつに、重要な財産と労力を割くのはどうでしょう? 取引回数が多ければ、顧客側に問題がある取引が含まれるのも致し方ないものです。クチコミひとつの対応に時間と労力をかけるより、よい感想を返してくれるお仕事を増やすほうが大事だと思います…」 かつては、悪いクチコミや理不尽な評判を書かれるのは悔しいけれども、あくまで「多数あるなかのひとつのクチコミ」でしかありませんでした。そのため、このような「スルー対応」で対処可能だったのです。 しかし最近は、インフルエンサーといった非常に発信力のあるアカウントが増えています。そんなアカウントに悪評を流されると、一瞬にして世間に伝播されるため、大変です。企業としても「戦う姿勢」が必要となり、また、SNS等のレピュテーションリスク(自社についてのネガティブな評判や噂が拡散されることで、企業価値や信用の低下、ブランドの毀損を招くリスク)に対しても断固たる体制を取らねばならないという、相当にハードな状況に置かれているといえるでしょう。
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