営業マンからクジラ専門店店主に 縄文時代から続く日本の食文化を次の世代へ
捕鯨船の乗組員として3年間勤め上げた板花さんは、6年前の35歳のとき、地元・あきる野市で、くじら専門店「らじっく」を開きました。 しかし、まったくお客さんが買いに来てくれません。 そこでキッチンカーでイベント会場を回って、串カツや唐揚げのお弁当を販売。すると、クジラ肉を懐かしむ中高年だけではなく、若い人がクジラに興味を持ってお弁当を買ってくれました。新しい食材に見えたそうです。 みんな口を揃えて「クジラってこんなに美味しいんだ」と目を丸くします。 そのうち、リピーターも増えて、お店が軌道に乗ったある日、お客さんから、こう質問されます。「なんで、昭島市で、お店をやらないの?」と。 あきる野市のお隣、昭島市は、実は「クジラの街」として知られています。1961年(昭和36年)、JR八高線の多摩川鉄橋の下流で、ほぼ完全な形の、クジラの化石が発見されました。このあたりは、二百万年前、海だったのです。市内を歩くと、くじらロード商店会、クジラが描かれたマンホール、8月は、くじら祭で盛り上がります。 クジラの街なのに、クジラ料理店がない……。
板花さんも、そのことが気になっていました。お客さんの後押しもあって、2024年2月、JR青梅線、「昭島駅」南口にクジラ料理店「昭島くじらのらじっく」を開きました。昼間はランチ、夜は居酒屋になります。
お店に入って、さあ、クジラ料理、何を食べよう!
まず勧められたのは、「クジラの刺身」。生姜醤油に付けて食べると、さっぱりして、臭みがまったくありません。舌の上で、溶けるような柔らかさで、美味しいんです。
次に「クジラの唐揚げ」。ひと口食べると、ジュワッとクジラの旨みが口の中に広がります。そうそう、小学校の給食の味です!
締めくくりは「クジラのステーキ」。外はこんがり、中はレア。ジューシーなクジラの旨みが味わえる絶品です。 「こんなに体に良くて、美味しいお肉は他にありませんから、もっともっとクジラを広めたいんです」 縄文時代からクジラを捕って食べてきた日本人。その食文化を、次の世代へ繋げていくことが、板花さんの使命です。