56歳年収680万円会社員の夫が青ざめた…家族の絆を引き裂いた「母の遺言」の「ヤバすぎる内容」
「家を売ることはできない」
夫の幸助さんから、義妹の久美さんに連絡し、家を売って幸助さんにも、せめて遺留分は現金で相続させてもらえないかと相談をしてもらいました。 ところが、久美さんの態度は思った以上に強硬でした。 「自分にも生活があるから、自分の住む家を売ることはできない。それに、自分にとっては思い出のある生家だから、そもそもお金の問題ではない」と、とりつくしまもない状態。 幸助さんは、久美さんと洋子さんの間で板挟みとなり、困り果ててしまいました。 それでも、洋子さんは態度を変えませんでした。遺留分の請求は相続人である幸助さんの権利です。洋子さんは、幸助さんを説得し遺留分減殺請求をすることにしました。遺留分減殺請求とは、本来貰えるはずの遺留分に不足する分を請求することです。 令和元年の民法改正以降、遺産の内容が不動産などであっても、遺留分減殺請求への支払いは金銭によることが原則となりました。もちろん、相続人同士の合意があれば、不動産の共有持分などにすることも可能ですが、洋子さんの場合は金銭での支払いを望んでいますので、義妹の久美さんは現金で約「180万円」を支払う必要が出てきます。もし、久美さんがこの現金を用意できない場合は、義実家を売却しなければならないでしょう。 洋子さんは幸助さんを通して、遺留分減殺請求の準備を進めていると久美さんに連絡しました。
泣きながら駆け込んできた
ところがある日、久美さんが洋子さんと幸助さんの自宅に泣きながら駆け込んできました。 「自分にも生活がある。いきなり住む家を奪うのか。兄妹なのに、法律をたてにこんなむごいことをするなんて、非道にもほどがある」 そうわめきたてる久美さん。とはいえ、久美さんには十分な相続遺産があるわけですから、洋子さんは白々しいと思いながら話を聞いていました。 しかし、「思い出の生家を売りに出すなんて」という久美さんの言葉を聞いて、幸助さんの態度に変化が。 情にほだされたのか、お人好しの幸助さんは、なんと「遺留分減殺請求はやめる」と約束して、久美さんを帰してしまったのです。 もちろん、猛抗議した洋子さん。しかし、幸助さんはこれ以上聞く耳を持ちませんでした。 結局、このことがきっかけで夫婦仲が悪化し、洋子さんと幸助さん夫婦は熟年離婚へと至ってしまいました。 また、幸助さんと久美さん兄妹も、これがきっかけで関係がぎくしゃくし、今ではほぼ絶縁のような状態になってしまっているそうです。 義母の遺言書が招いた悲劇。お人好しも良い事ですが、お金の問題を、情にほだされてなあなあにしてしまうのは言語道断と言っても良いでしょう。 それは、たとえ血のつながった家族間であってもかわりはありません。まして、夫婦の共有財産に手を付けるとなればなおのこと。家族間でも、しっかりと責任をもって管理することができないのであれば、お金のやり取りは厳にひかえるべきです。 また、相続でお金の返済をするというのもトラブルの元です。なぜなら、いざトラブルになってしまったとき、当人がこの世になく話し合いができない状態になってしまうからです。 家族をこのような不幸に陥らせたくないのであれば、お金の問題は生前にきっちりけじめをつけておく、という意識も持っておく必要があるのでしょう。
平谷 啓一(FP・人生相談師)