松下奈緒、いつもとは違う「音」を出したい。映画『風の奏の君へ』でピアニスト役
松下奈緒さんがピアニスト役で、映画『風の奏の君へ』に主演します。作曲や演奏も手掛け、⾃分⾃⾝と重なる部分も多く感情を揺さぶられたと話します。どうリンクさせながら演じたのか、お茶の産地として知られる岡山県美作市でのロケにどんなことを感じたのか、うかがいました。 【画像】撮り下ろし写真(松下奈緒)
都会にはない風の匂いを感じた
――本作品、『風の奏の君へ』の話を聞いたときの感想を教えてください。 松下奈緒さん(以下、松下): 今回は岡山県美作(みまさか)市が舞台でしたが、地方でしっかりその世界に入り込んで撮影ができるのは映画ならではなので、すごく楽しみだなと思いました。 私が演じる里香(さとか)はピアニストで、私自身も演奏・作曲をするので、嬉しかった半面、自分と共通する部分が自分に味方してくれるのか、ぶつかってしまうのか、最初は不安もありました。特にピアノを弾くシーンは、どこまでが自分でどこからが役なのかその境界線が難しいな、と感じていました。 でも、現地であの景色に触れたときに、「きっと里香はこう感じたんだろうな」とすっと思えたんです。美作の風に吹かれることで、家で台本を読んでいたときには気づかなかった方向性のようなものに気づくことができた感覚がありました。 ――撮影は岡山県美作地域で行われました。美作市の印象はいかがでしたか? 松下: 映画のタイトルにも「風」とついていますが、美作で風が吹いたときに、何とも言えない懐かしい匂いがしたんです。森の匂いなのか、緑の匂いなのか……都会にはない匂いでした。空気は澄んでいますし、高台に行けば行くほど風が気持ちよくて、深呼吸がしたくなる。そんな場所が街の中にたくさんありました。自然の中で邪念が取り払われていく感覚もあり、とても素敵で落ち着いた街だなという印象を持ちました。 大谷健太郎監督が美作市で育ったので、撮影前から美作の良いところからおいしいお店まで、たくさん話を聞いていたんです。美作のことを知り尽くし、美作愛に溢れた監督だからこそ撮れる映像があったと思います。「こんな絵を撮りたい」「この場所でロケをしたい」という監督のこだわりを近くで感じて、とてもワクワクしました。 ――撮影期間中、現地の方とのふれあいもありましたか? 松下: 数えきれないほどの方々に直接的、間接的にとてもお世話になりました。お茶の工場に連れて行ってくださり、1つ1つお茶を淹れる工程を見せていただくなど親切にしていただきました。行ってすぐの頃に美作の方が淹れてくださったお茶がすごく温かくておいしかったんです。お茶1杯でこんなにも心がほっとできるのか、と思いました。当時まだ寒かったからこそ、余計にその温かさが嬉しかったですね。 私は普段からお茶が好きで、よく飲むんです。今回、甘いもの、少し苦みのあるものなどいろいろな種類のお茶を飲ませていただいたのですが、全部とてもおいしかったです。お茶を作る工程を実際に見せていただき、本当に大事に育てられていることも知りましたし、作り手の思いで味も変わっていくんだな、まだ知らない味がたくさんあるなと実感しました。 「茶香服」(ちゃかぶき=利き酒のようにお茶の特質から銘柄をあてる遊び)のシーンは地元の方にもご協力いただきました。撮影時間が長く、合間合間にみんなで「頑張りましょう」と声を掛け合ったりして、通常のスタジオ撮影では感じられないような、人と人とのつながりを感じることができました。