視覚と聴覚を越えた戦闘体験!MX4Dで観た『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』はすごかった
興行収入34億円を突破し、動員207万人という「ガンダム」シリーズ最大級のヒットで記録を更新し続けている『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』(公開中)。2月9日からは通常上映に加えて、様々な形でよりディープな映像体験ができるドルビーシネマ、4DX、MX4Dのラージフォーマットでの上映もスタートしている。今回は、より深く作品に没入すべく、MX4Dでの上映を体感してきたのでレビューしよう。 【写真を見る】衝撃的なラクスのパイロットスーツ!激しく揺れる4D演出との相性は? ■全身で作品世界を体感!4D上映の特徴をおさらい まず本編のレビューに入る前に、簡単に「4D」の上映形式について解説しておこう。4D上映とは、稼働式の座席に座り、劇中のシーンやアクションと連動する形でシートが動いたり、風やミスト、ストロボ、香りなどの特殊効果が追加されたりする上映方式のこと。映画は視覚と聴覚で楽しむものだが、それ以外の身体の感覚で映画を“体感”できる演出要素が加わることで、よりディープな没入感の高さを味わうことができる。 現在、日本では4DXとMX4Dという2つの形式が上映されている。4DXはシートの動きの幅が広く、ダイナミックな演出を味わえるのが特徴。MX4Dはシートの動きの幅は小さいが、シート内に配置された振動を演出する機器によって映像に合わせた繊細な振動体感演出を楽しむことができる。今回は、後者であるMX4Dの上映方式にて、本編を楽しんできた。 ■モビルスーツに乗り込んでいるような没入感がすごい…! ここからは映画冒頭の流れに合わせて、4D演出の状況を追っていこう。開幕の直後に始まるのは、4D演出にもピッタリな、アフリカ共和国オルドリン自治区へブルーコスモスの攻撃部隊が侵攻するシーン。主人公のキラ・ヤマトらが所属する世界平和監視機構コンパスがこの戦闘に介入する見せ場だ。 発射されるミサイルや飛行ユニットを装備した機体が上空を横切り、対空砲が発射され、目の前を進軍する地上部隊のモビルスーツが歩を進める。この緊張感の高まる戦闘では、モビルスーツの歩行による地響きやミサイル発射による衝撃などがシート越しに伝わり、戦場にいるような臨場感を体感できる。モビルスーツの歩みに合わせてわずかに上下するシートの稼働がリアルで、逃げ惑う市民の不安感がしっかりと伝わってくる。 そんな状況から、視点はコンパス所属のキラたちが出撃する新造艦ミレニアムへ。カタパルトから射出されるライジングフリーダムガンダムやイモータルジャスティスガンダムのコクピットが映しだされ、キラやシンの視点にシンクロすると、ガンダム作品の醍醐味である出撃シークエンスを体感することになる。カタパルトの力を借りて宇宙空間へとライジングフリーダムが出撃すると、機体の制動に合わせてシートが傾き、大気圏へ向けて飛行する映像に合わせてファンによる風を感じる演出が加わり、冒頭シーンでの客観的な一般住民視点からモビルスーツに乗り込んでいるような主観視点に意識は切り替わり、ここから作品への没入感はさらに高まっていく。 ライジングフリーダムが地上に降り立ち紛争を止めるべく戦闘に入ると、4Dとしての演出のギアがアップ。デストロイガンダムとの戦闘で飛び交う赤と緑のビームに合わせ、前方に配置された同じ色のストロボが発光。視界に捉える映像の外が劇中に連動した光が瞬くと、戦闘空間にいるような感覚が増し、さらにライジングフリーダムの高速での戦闘に合わせて椅子が動き、振動が伝わる様子はまさに“視覚と聴覚を越えた”戦闘体験となる。 ■ドラマパートで効果を発揮する“匂い"の演出 オープニングの戦闘シーンから4Dらしい演出をじっくりと味わえるが、それ以外にも細かいポイントでじっくりと没入感を味わえるポイントがある。その代表とも言えるのが、ファウンデーション王国への入国シーン。アークエンジェルとミレニアムがファウンデーションの港に向けて着水するシーンでは、ミレニアム側の操艦はまだ不慣れなせいかちょっと揺れて描かれるのだが、一方のアークエンジェルはベテラン操舵士のノイマンによる操艦でスムーズに着水する。その“揺れ”の差がしっかりと振動として表現されているのには驚くばかりだ。もちろん着水時の臨場感は、水がかかる形でも演出されている。 こうした振動だけではない4Dならではの演出は、ドラマパートでは“香り”で効果を発揮する。ファウンデーション王城内の晩餐会で、一緒にダンスをした後に庭園に向かうラクスとオルフェ。一面にバラが咲き乱れ、そこでラクスにオルフェが一輪のバラを差し出すシーンでは、バラの香りが立ちこめる。そして、このバラの香りは、ブラックナイトスコードが特殊能力を駆使して相手の精神に影響を与えるシチュエーションや、劇中で恋愛に関係するシーンなどの演出にも使われている。 もう一つ振動の演出として印象的なのは、“衝撃”を受けるシーン。モビルスーツの戦闘シーンでは、背後に攻撃を受けるシーンがいくつか登場するのだが、シートの背部に取り付けられた振動機構によって、ライジングフリーダムの背部ウイングが破壊されるシーンや、キラがアスランに殴られるシーンなどでも効果を発揮。攻撃をする側だけでなく、ダメージを受ける側の印象も高めてくれる。このダメージ振動効果は、視覚情報以上にキラが苦戦する厳しい状況を体感しているような気持ちになる。そして、ダメージの振動はより大きな“衝撃”も強調してくれる。物語の中盤でのアークエンジェルの撃沈シーンでは、動力を失い胴体着陸する際にマリュー艦長の「衝撃に備えて!」の言葉の後に味わう大きめの振動が、“戦艦の最期”をより臨場感のある形で体感することができる。 また物語のクライマックスで、ファウンデーションの旗艦にミレニアムが衝角「轟天」で攻撃をするシーンでも、再びマリュー艦長による「衝撃に備えて!」の言葉の後に座席が大きく揺れる。しかし、ここではアークエンジェルの撃沈シーンと異なり、勝利に向けた一撃として、シートの揺れが劇中における重要シーンの“衝撃”をより大きな印象として残してくれるのだ。 ■クライマックスは4D演出のつるべ打ち! これらの4D演出は、クライマックスの戦闘シーンで最高潮を迎える。キラ、アスラン、シン、ルナマリアたちに代わる代わるスポットが当たる戦闘シーンでは、ここまで紹介してきた4D演出のつるべ打ち状態。目まぐるしく変わるシーンに応じて、シートの演出も激しさを増していくが、物語のテンションと共に感じる4D演出の数々は一つ一つの戦いをより印象深くしてくれるように感じる。激しい4D演出を味わって迎えるエンドロールは、まさにキラたちと共に戦いを終えたような感覚が味わえるだろう。 筆者は、『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』を通常上映とドルビーシネマに続いてMX4Dを体験したが、ドルビーシネマ版は通常上映と比較して映像としての解像度が高くなった印象を持った。それは、音や映像というもとからあったものがより高精細になった結果であり、客観的な視点から映画全体を楽しんだという感覚だ。一方のMX4Dは、映像や視覚に加えて、振動や光、香りといった追加要素によって、劇中のキャラクターにより近い視点で映像に没入し、主観に近い形で作品全体を楽しんだ印象が残っている。そういう意味では、MX4Dで観る『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』は、まさに作品を“体感”すると言えるものだった。 通常上映で作品を理解したファンが、リピートするにあたってより深く作品を楽しみたいのであれば、ぜひ4D上映で『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の世界に没入してみてほしい。 取材・文/石井誠