聴覚障害児の療育体制構築へ 静岡県と県立総合病院 豪州機関とモデル事業 先進手法導入、プログラム作成や専門人材養成
静岡県と県立総合病院は2025年度から、聴覚障害児の療育体制の構築に向けたモデル事業を始める。難聴児療育の先進国オーストラリアの療育機関「シェパードセンター」の協力を受け、オーストラリアの手法を取り入れた全国初の効果的な療育を実施し、先天性難聴児の音声言語の習得につなげる。県と同病院を運営する県立病院機構、同センターが5日、県庁で協定を締結した。 人工内耳を装用した県内の乳幼児を同病院で27年度まで3年間、毎年10人程度受け入れる。同センターはエビデンスに基づいた聴覚訓練や音声言語能力の評価などの指導を同病院の職員に行い、聴覚障害児の特性や発達段階に応じた手法を学ぶのを後押しする。日本語に適したプログラムの作成や国内に少ない専門人材の養成にも取り組む。 先天性の難聴は国内に千人に1~2人いるとされ、早期の発見と治療、適切な療育によって健聴者と同等の音声言語の習得が期待できる。同センターは0歳児から家族を含めた療育サービスを提供している。一方で、国内では人工内耳装用後の療育の手法や担い手、施設が不十分で、本県では未整備だった。 県庁で開いた締結式で、鈴木康友知事と同機構の田中一成理事長、同センターCEOのアリーシャ・デイビス氏が協定書に署名した。鈴木知事は「聴覚障害児が音声言語を習得し、将来がさらに大きく開けることを願う」と述べた。デイビス氏は「国際協力の素晴らしい事例であり、子どもたちと家族に選択肢を提供するミッションを共有できる」と期待を込めた。 本県は同病院の高木明医師が聴覚障害児支援の旗振り役となり、保健福祉や教育、行政など関係機関による支援協議会を開催するなど全国に先駆けた取り組みを実施してきた。新生児聴覚スクリーニング検査の受検率は98%を超え、全国トップクラスとなっている。
静岡新聞社