難病発症プロ野球選手の再起支える 福島医大講師の加藤欽志さん(45) 黄色靱帯骨化症の5人手術、現役継続後押し
福島県の福島医大整形外科学講座講師の加藤欽志さん(45)は下半身のしびれや脱力感が出る原因不明の難病「黄色靱帯(じんたい)骨化症」に苦しむプロ野球選手の再起を支えている。主に中高年が発症するが、スポーツ界では若年患者も多く、引退に追い込まれる例も。これまでに5人のプロ投手を手術し、現役継続を後押しした。「原因を突き止め、一人でも多く救いたい」と力を込める。 富山県小杉町(現射水市)出身。スポーツドクターを志して福島医大医学部で学んだ。2003(平成15)年に卒業して整形外科医となった。 2012年、楽天の投手(当時)が原因不明の左脚の違和感を訴えてきた。検査で黄色靱帯骨化症と判明し、手術した結果、1年半以上続いた症状が落ち着いた。 2014年に楽天のチームドクターに就任すると、黄色靱帯骨化症への対応が広まり、他球団からも診療を頼まれるようになった。「やるしかない」。以降の10年間で野球選手だけでプロ、アマ合わせて約600人の脊椎や背骨を診てきた。
中日の中継ぎ、福敬登投手(31)も患者の一人だ。2022(令和2)年夏に左脚の脱力感で戦線を離れ、同年10月に手術をした。「すぐ手術するしかないほど厳しい」症状だったが、術後の経過は良好で4週間後にはランニングやキャッチボールを再開。一軍復帰を果たした。 昨年5月5日に本拠地バンテリンドームナゴヤで行われた巨人戦。福投手は2―3の八回表に登板すると、病の影響を感じさせない好投で1安打無得点に抑え、逆転勝利を呼び込んだ。復活した左腕は「加藤先生には感謝しかない。ウイニングボールは先生にと決めていた」と万感の思いを語った。後日、「感謝」と記されたボールを受け取った加藤さんは「さらなる活躍に期待したい」とエールを送っている。 野球選手は一般市民にに比べて症状にばらつきがあり、専門医でも診断が難しく、明確な予防法も判明していない。加藤さんは「年齢や競技レベルを問わず、多くの患者を治せるよう、知識や経験を積む」と意気込む。