AAAMYYYが語る『(((ika)))』のサウンドメイキング、「大人になったアルバム」の意味
Tempalayが約3年ぶりにフルアルバム『(((ika)))』を完成させた。今作のリリースに関するインタビューを受けるにあたって、メンバー3人が同じ机について答える形式は取らないらしい。それならと、小原綾斗(Vo, Gt)、藤本夏樹(Dr)、AAAMYYY(Syn, Cho)を、同じ時間帯に別室で別のライターがインタビューするという、前代未聞の形式を提案した。私はAAAMYYYのインタビューを担当させてもらったが、他の2人がこのアルバムや現在のTempalayについてどのように語っているのか、まだまったく知らない。バンドや音楽に対する見方は人それぞれで、インタビューで語られる言葉とはいかに主観的であるか、ということが浮き彫りになるんじゃないかという気がしている。その上で、「やっぱりTempalayというバンドは歪で面白い」ということが表出すればいいのだけれど……。 【写真を見る】Tempalay シンセサイザー&コーラスとしてTempalayの音を担っている、AAAMYYY。前作からの期間に出産・産休を経て、現在はソロとしても素晴らしい作品をリリースしライブも行うなど、精力的に活動を続けている。AAAMYYYから見た『(((ika)))』についてさまざまな言葉を紡いでもらったこのインタビューは、とても和やかな雰囲気の中で進んでいった。 ―先日放送された特番『Music Proof~Tempalay~』を見て、「あれ、Tempalayってこんなに仲悪かったっけ?」と思ったんですけど(笑)。実際、メンバー間の距離感はどうですか。 みんなが言うほど、仲悪くはないと思う。大丈夫。 ―よかった(笑)。でもインタビューは、全員ではなく別々で受けようということになったんですね。『ゴーストアルバム』(2021年リリース)の取材は3人でやりましたよね。 みんな自由なことを言うから、(小原)綾斗が語り尽くせなくて、多分1人のほうがいいってなって。(AAAMYYYと藤本夏樹は)音の話ばっかりしちゃうから、綾斗が単体で作品全体の造形を話したほうがよさが伝わるということで、そうなったんだと思います。 ―仲悪いとか、一緒にしゃべりたくないとかではなく、そのほうがアルバムの中身を伝えやすいというシンプルな理由で。 多分、そうだと思います。 ―AAAMYYYさんから見て、『(((ika)))』はTempalayにとってどんなアルバムになったと感じていますか。 すっごく大人になったアルバムだと思いました。 ―大人? それはどういうところで? まず、音数が今までの中で一いちばん少ない。それによって綾斗が書いてくる哀愁とか、ふざけた部分、ギミックがより可視化した感覚がして、そこが大人になったなって思います。 ―音数を減らしたのは、どういう要因からですか? 「ドライブ・マイ・イデア」を作ったのが1年以上前で、その時くらいまでは、シンセにテックを入れたことがなくて。ギターテックとかドラムテックはいるんだけど、シンセのテックってどうしてもいないから、私が家でやったり、スタジオでみんなで「どう?」って言いながらやったりしていたんですけど、挑戦的に人を呼んで手伝ってもらいました。80’sライクのいろんなシンセの遊んだ音を入れたいということで、小西(遼)を呼んだのが「Superman」。「今世紀最大の夢」はライブのベースサポートをしてくれたShin Sakainoくんを呼んで。他の曲は全部、夏樹と一緒にやりました。 ―1個1個の音を研ぎ澄ますことができて、必要な音だけを厳選して入れられるようになったからこそ、全体の音数を減らすことができたということですよね。 そう。飽和しないというか。いろんな楽器のいいところが聴こえるようにしたくて引き算したり。リッチな音だけどちゃんといい音で、他に干渉しない、ということを夏樹とすごく考えながら作ったので、音が可視化された感じです。夏樹の感覚もすごく面白くて。ソロでシンセとか機械を操ってるので、すごく詳しいんですよね。私が感じるTempalayでのアプローチと違って、夏樹はドラマー目線で全体を見て、ドラムのフレーズが引き立つところもちゃんと押さえたものが出てくるから、新しい視点で面白かったです。 ―AAAMYYYさんにとって、今作において音の面でいちばん苦労した曲は? 「遖(あっぱれ)!!」「愛憎しい」とか。綾斗のこだわりも強くて、何回も作り直しました。 ―2曲目「愛憎しい」と18曲目「Aizou’」、別バージョンが入っていることの意図を色々と想像してしまうのですが……。 綾斗の意図はわからないんですよね。いつも教えてくれないから、私たちも綾斗のインタビューを読んで「へえ」みたいな。 ―(笑)。AAAMYYYさんが感じた、「愛憎しい」の綾斗さんのこだわりポイントはどういったところでしたか? 多分、本人の想像する世界観が壮大な感じで。でもシンセで壮大にしようとすると、うるさくなっちゃうというか。最初は耳につくような、ビンビン、ジイジイいうようなリリースの長い音だったんだけど、「なんか違う、なんか違う」ってなって音をダイエットして。木を打ってるようなナチュラル要素のあるシンセの音を作って、これになりました。壮大さを補ったのは、クワイヤーとか歪みのギターだったんじゃないかなと思います。 ―祝福感や人間讃歌的なことを表現するためにクワイヤーを入れようという意図が最初からあったわけではなく、色々試してみて、想像している壮大さを出すためにクワイヤーを入れてみよう、という順番だったんですね。 いや、わかんなくて。「クワイヤーを入れたいらしい」ということをマネージャーづてに聞いて、「そうだったんだ、じゃあこのシンセはあれだね」みたいな。綾斗ってあんまり言葉にしないから。聞けば言ってくれるんだけど。