「情報を与えない」「侵入を躊躇させる」…元″強盗犯″たちが伝授する「犯行を諦めさせる」防犯術
「犯行を諦めさせる」防犯術
犯罪のフェーズが一変した年――後に’24年はそう言われるのではないか。 列島を恐怖のドン底に突き落としたのが、今夏以降、首都圏で相次いだ無差別強盗だ。深夜、家屋へ押し入り、住人らに暴行を加えたうえで金品を奪う乱暴な手口なのだが――。 【画像】窓ガラスが割られ……強盗未遂事件の標的となった家屋「現場写真」 脅威なのは「犯人らは押し入る先の資産状況などは細かく精査せず、無差別にターゲットを決めている」(全国紙社会部記者)と思われる点だ。 強盗に狙われるような理由がなくとも、誰もが被害者になりうる異常な状況下でいかに備えればいいのか。FRIDAYは今回、元″強盗犯″たちに接触。強盗の心理や習性を学び、「犯行を諦めさせる」防犯術を伝授してもらった。 ある強盗グループを仕切っていたA氏が打ち明ける。 「侵入するかどうか決めるにはある程度の情報が必要だ。無差別に襲っているように見えても、最低限の下見は必ず行っている。つまり、外から見ただけでは得られる情報が少ない家は侵入しにくい」 具体的にはどのような点に気を付ければいいのか。A氏が続ける。 「表札に家族全員の名前が書いてある家は、家族構成を犯人に教えているようなもの。苗字だけにするとか、①表札に書く情報は最低限にすることが必要。洗濯物も情報のかたまり。高齢者しか住んでいないかどうかなどすぐにわかる。②洗濯物を室内の見えにくい場所に干している家は、下見で家族構成を割りにくい。 今はコンビニや街の至る所に当たり前に防犯カメラがつけられているから、強盗側は何度も下見はしたくない。″数回見ただけでは情報が集まらない″と強盗に思わせることが大切だ」 だが、犯人たちに情報を与えたくないからといって高い塀や植木を使い、外部から完全に敷地内の様子を見えなくしてしまうのもよくない。かつて半グレ集団に所属し、強盗をシノギの一つにしていたB氏が言う。 「外からの見通しが悪いということは、一度敷地に入ってしまえば周囲の住人に気付かれる可能性も低いということ。狙われやすいと思ったほうがいい。逆に、③塀や植木が低くて外から丸見えの家のほうが、俺はイヤだね」 侵入先を見極める際、犯人らが気にする要素はほかにもある。前出のA氏が解説する。 「昔の家は勝手口があった。玄関と窓のほかにもご丁寧に侵入口を増やしてくれているわけだ。もし勝手口のある家に住んでいるのなら、④植木鉢などの障害物を勝手口までの間に置いておくといい。″侵入口″への経路を塞がれるのは、強盗側としても面倒だから。⑤窓に格子やシャッターを付けておくのもいいだろう。侵入口を限定できるからだ。小窓にまで格子が付いていたら、″侵入口がない″と手を焼く」 ◆時間稼ぎは「5分以上」 最近のケースでは、実行犯が指示役に個人情報を握られており「現場から逃げ出した場合は家族を殺す」などと脅迫を受けているケースが多々あった。犯罪グループで指示役を務めたC氏がささやく。 「指示役からすれば、実行犯が捕まろうがどうでもいい。とにかくターゲットの家に突っ込ませようとする奴が少なくないんだ。だから被害に遭いたくないなら、実行犯がビビったり、躊躇するような″仕掛け″をしなければいけない」 実行犯が躊躇するような″仕掛け″とは具体的に何なのか。前出の半グレ関係者B氏が挙げたのは、意外なものだった。 「⑥日本警察犬協会や、猛犬注意のステッカーが貼られた家は、侵入前に身構えるもの。⑦警備会社のマークが貼られていても、″ここに入ると面倒なことになりそうだ″と思わせる効果はある」 都市防犯研究センターの統計によれば、家屋への侵入に5分以上かかった場合、実行犯の7割が侵入を諦めるという。 「⑧ドア、窓の鍵の数は多ければ多いほど厄介だね。当然だけど、1個しか鍵がついていないより2個、3個あったほうが突破に時間がかかるから」(同前) 現在は大掛かりな工事が不要な補助鍵、スマホを使って開け閉めするスマートロックが数千円でホームセンターに売られている。防犯のために、購入を検討するのも手だろう。 元強盗犯たちが共通して嫌がるシステムもあった。⑨家に防犯カメラ、人感センサーライトが付けられている場合は侵入を躊躇するというのだ。 「最近の防犯カメラは画質がよくなっていて、犯人の特定につながっているからね。ただ、ダミーのカメラを付けている家があるけど、あれは意味がないどころか逆効果。見るやつが見ればすぐ偽物だとバレると思っておいたほうがいい。単純だけど、犯人たちは暗闇から侵入したいから、人感センサーの付いたライトを設置する意味はあるだろう。音も立てたくないから、⑩防犯砂利を敷いてある家も嫌だった」(前出・A氏) 令和の強盗はわずかなカネのために、命も簡単に奪っていく。だからこそ、打てる手はすべて打っておきたい。ほんの数分足止めできるだけで、助かることがあるのだから。 『FRIDAY』2024年12月13・20日合併号より
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