トム・ハンクスが68歳に “フォレスト・ガンプ”や「トイ・ストーリー」…硬軟自在に演じ分ける名優の華麗なるキャリア
ハリウッドを代表する実力派俳優トム・ハンクスが、7月9日に68歳の誕生日を迎えた。若い頃はコメディー作品への出演が多かったが、キャリアを重ねるにつれてシリアスな作品にも多く登場し、作品ごとに違った役で、いろんな表情、多彩な演技で楽しませてくれるハンクス。1956年7月9日、アメリカ・カリフォルニア州で生まれた彼の映画デビューは、1980年の「血ぬられた花嫁」で、主人公の友人の恋人を演じた。それ以降出演した作品を挙げ始めるとキリがないほど多いので、今回はハンクスのキャリアに欠かせない代表作を中心に紹介する。 【写真】いつまでも仲良し!トム・ハンクス&妻リタ・ウィルソンの2ショット ■初々しいラブロマンスが展開 まずは1984年の「スプラッシュ」。ニューヨークを舞台に、青年アレン(ハンクス)と人魚マディソン(ダリル・ハンナ)の恋愛を描いたファンタジックなラブコメ。子どもの頃、遊覧船から海に落ちたアレンは、海中で美しい少女(人魚)に助けられる。それから20年がたち、また海に落ちてしまったアレンだったが、目を覚ますと目の前に美しい金髪の美女がいた。しかも全裸の。コメディーセンスが光り、ハンクスとダリルのロマンスが初々しい。マディソンが海中を泳ぐシーンの美しさも際立っていた。 1988年の主演映画「ビッグ」もハンクスの魅力が詰まったコメディー作品。12歳のジョッシュ(デヴィッド・モスコー)は、カーニバルの会場にあった不思議なマシンに「大きくなりたい」と願った。翌朝目覚めるとその願いがかない、ジョッシュ(ハンクス)は大人になっていた。といっても、体は大人だけど中身は12歳。友人ビリーの助けを借りて、おもちゃ会社に就職したジョッシュは、子どもの感覚とセンスでヒット商品を生み出していく。しかし、思っていたほど大人の世界は楽しくなく、子どもに戻りたいと思うようになっていった…。体は大人、中身は子どものジョッシュを見事に演じ、ゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞。コメディー要素多めながら、ハートフルな作品にもなっている。 1990年の「ターナー&フーチ/すてきな相棒」もハンクスの“コメディー”の良さが楽しめる作品。潔癖症の刑事スコット・ターナー(ハンクス)が組むことになった相棒は、しつけのなっていない犬フーチ。仕事だけじゃなく、家のことも、恋愛のこともフーチにかき回されてしまい、トラブルが絶えないが、潔癖症のターナーが次第にフーチを受け入れていくストーリーに心があったかくなる。 ■ファンも多い名作「ターミナル」で主演 2004年に公開された「ターミナル」は切なさがありながらも、ハンクスらしいコメディー部分も多い作品。クラコウジア人のビクター(ハンクス)は、アメリカのジョン・F・ケネディ国際空港に到着し、入国手続きをしていたが、母国でクーデターが発生し、クラコウジア政府が消滅したことにより入国ビザが取り消されてしまっていた。空港から出られないビクターは、亡命・難民申請を受理してもらえず、空港の中で寝泊まりすることに…。ほぼワンシチュエーションで展開される物語で、ビクター自身、そして周りの人たちのビクターを見る目が変わっていくところが面白いところ。 1995年公開の「フォレスト・ガンプ/一期一会」もコメディー要素を含む作品。純粋な心と恵まれた体を持つフォレスト・ガンプ(ハンクス)。温かい周囲の人たちの協力の下、数々の成功を収めて、周囲に幸せをもたらせていく。まさに笑いあり、涙ありのビューマンドラマの代表格的作品。 シリアスな作品となると1993年の「フィラデルフィア」は外せない。法律事務所で働く敏腕弁護士アンドリュー・ベケット(ハンクス)はHIV感染を宣告される。会社側は仕事上のミスをでっちあげ、彼を解雇。不当な差別と闘うためにベケットは意を決して訴訟に踏み切る。エイズと同性愛に関する偏見を法廷で覆していく作品で、ハンクスは第66回アカデミー賞で主演男優賞を受賞した。 1995年公開の「アポロ13」は、アポロ13号の爆発事故に基づく作品で、ハンクスはアポロ13号の船長ジム・ラヴェルを演じている。宇宙開発をテーマに、実際に起こった事故を扱う作品ということで、そのシリアスさに胸を痛めるシーンも。監督は「スプラッシュ」のロン・ハワードが務めている。 1998年の「プライベート・ライアン」は、第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦において行方不明になった一人の兵士の救出に向かう舞台を描いた戦争映画。戦場の描き方がリアルで、ケガをしている兵士、亡くなっている兵士の姿が見ている側も痛みを感じてしまうほど。第2レンジャー大隊の指揮官ジョン・H・ミラーを演じ、ハンクスの演技の幅がさらに広がった。 2000年公開の「グリーン・マイル」では死刑囚刑務官を演じ、ここでもまた痛みを伴うシーンが多く、シリアスな演技に胸が締め付けられる。さらにハンクスのハマり役の一つとして挙げておきたいのは、ロバート・ラングドン。「ダ・ヴィンチ・コード」「天使と悪魔」「インフェルノ」と続くシリーズの主人公で、知的な推理とスリリングな展開が見応えがあった。 そしてもう一つ、「トイ・ストーリー」シリーズの“ウッディ”もそう。同作は、おもちゃたちの世界を舞台に、人とおもちゃの絆を描いたディズニー/ピクサー作品で、1995年に第1作「トイ・ストーリー」が公開に。ウッディやバズ・ライトイヤーなど、登場するキャラクターが魅力的で世界的なヒットを記録。1999年に「トイ・ストーリー2」、2010年に「トイ・ストーリー3」、もう続きはないかと思っていた頃、2019年に「トイ・ストーリー4」が公開された。アニメーション作品なので姿は登場しないが、声とセリフ回しにハンクスらしさを感じる。 俳優だけでなく、監督やプロデューサー(製作総指揮)なども行うハンクス。1996年の監督作「すべてをあなたに」は、シャーリーズ・セロンの出世作となり、ハンクスも監督として高い評価を得た。2011年には「幸せの教室」の監督を務めたほか、第二次世界大戦を描いた「バンド・オブ・ブラザース」(2001年)ではスティーヴン・スピルバーグと共に製作総指揮を務めた。2024年3月公開の「ブラッディ・ハンドレッド」は、マスターズ・オブ・ザ・エアーのモデルになった実在の空軍兵たちが、第100爆撃群での人生観が変わった悲惨な出来事について語る作品だが、ナレーションを担当したほか、こちらでもスピルバーグらと共に製作総指揮を担当している。 硬軟自在に演じ分ける俳優として、そして監督、製作などいろんな形で映画に携わり、長年映画界に貢献してきたトム・ハンクス。68歳の誕生日を迎えた後も、どんな作品を見せてくれるのか楽しみだ。 「トイ・ストーリー」シリーズは、ディズニープラスで配信中。 ◆文=田中隆信