フリーアナウンサー・神田愛花『今年決めた日村愛花の覚悟』
この一年、沢山のお仕事に恵まれた。「2023ブレイクタレント」ランキングで1位にもなり、周囲の皆さんから祝福を受けた。私なんて秀でた才能もなく、NHK時代のアナウンス力も抜け切った43歳のただのオバサン。母から「まぁよくお仕事が続くわねぇ。今さら愛花に何の用があるってーの?」と言われるが本当にその通りで、ただただ有り難い思いで仕事先に出かけている。 【画像】個性あふれる神田愛花さんの直筆イラスト(1回~35回)はこちら お仕事を沢山頂戴できたおかげで収入も増えた。貯金も大事だが、「あそこから見る世の中ってどんな感じかな?」と憧れていた環境に身を置いてみたり、「このまま持ち帰られたらどんなに素敵か……」と憧れていたお洋服を購入してみたり。この一年は、収入を自分の″憧れ″のために使うと決めて過ごした。 きっとそんな毎日は「生きていて楽だろうなぁ」と思われるだろう。私も、憧れを実現し心が満たされ、万事上手くいくと思っていた。だがフジテレビ系『ぽかぽか』が始まり4ヵ月が経った頃、異変が起きた。(なんか、イライラする!)。 当時の私の一週間はこうだ。平日は、朝食を急いで作って家を出て、お昼過ぎまで『ぽかぽか』生放送。その後、昼食を食べる間もなく別の番組の収録に行き、夜帰宅。夕食を作る体力も、持ち帰った楽屋のお弁当を温める気力もなく、冷たいまま食べて寝る。土日もお仕事で、合間に連載の原稿とイラストを書く。すると、身体が睡眠を求め始め……気づくとまた同じ一週間が始まっていた。 おかげさまで先述のランキング1位に輝くことはできたが、それまで週に一度は必ずかけていた掃除機もかけられなくなり、家中がホコリだらけになった。その状況に文句も言わず、裸足でホコリの上を歩く夫。これまでなら(夫には良い環境で仕事をしてほしい。掃除しなきゃ!)と思えていたのに、(なんで平気なの? 掃除機ぐらいかけてくれてもいいのに!)と腹が立つようになったのだ。 他にも、使ったハサミを元の場所に戻さない、使った鼻うがいの道具をビチャビチャのまま洗面台に置くなど、細かいことが気になるようになった。これまでは私が補(おぎな)うことで成り立っていたが、(なんで私が!!)という思考のせいで喧嘩も増えてしまったのだ。 (このままでは破綻する)。危機感を覚え、夫に「少しは家のこともしてほしい」とお願いをした。すると掃除機をかけたり洗面台を拭いたりしてくれ、私の負担は軽減され始めた。なのになぜか、イライラは治(おさ)まらなかった。 悩んだ末、婦人科で更年期障害が始まったのか尋ねたが、「まだですねー」とのこと。(ではなぜ?)。2ヵ月ほど自分と向き合うと、問題の核心が見えてきた。 ◆妻としての責任感 私は母が専業主婦の家庭で育った。父は仕事一筋で家のことは一切やらなかった。父が気持ち良く仕事ができるよう、母は家事育児をすべて一人で担っていた。子どもは3人。まだ少女だった私から見ても大変そうだった。だが他のお母さんのやり方を見たことがないから、今も母以外の″妻像″がわからない。よって自然と母のやり方を踏襲(とうしゅう)している。夫が手伝ってくれることで楽になったにもかかわらず、それ自体に罪悪感があり、私の中での″妻としての責任″を果たせていない自分に腹が立ち、イライラしているのだった。 ここまで分析できたら、次は、その責任感を満タンにするのか、それとも満たせなくてもOKとする自分に変わるのか、二者択一だ。前者は、仕事量を調整するしかない。後者は、「すべてのことに全力投球」という私の生き方を変えるしかない。正直、後者を選択し、家事をサボりながらこれまで通りお仕事はすべて受け、潤沢な収入を得る生き方に憧れる。だがこの秋、私は前者を選ぶ決断をした。 収入とチャンスは減るだろう。だが受けたお仕事には全力で臨み、この先お仕事よりも長く続くであろう″日村愛花″としての人生にも全力を注ぐ。私の生き方のNEWバージョンをスタートさせたのだ。何よりも仕事を優先してきた私にとっては、大きな決断だった。 2024年が、もし「最近テレビで見なくなったわねー」と言われる年になってしまっても、「私、家庭重視派なので!」と言い訳もできるし、まぁいいか。さぁて、どんな年になるかな。 かんだ・あいか/1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』(フジテレビ系)にメインMCとしてレギュラー出演中 『FRIDAY』2024年1月5・12日号より 文・イラスト:神田愛花
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