話題の映画『パスト ライブス/再会』セリーヌ・ソン監督インタビュー!世界が感じた“イニョン(縁)”の概念。
第96回アカデミー賞で作品賞と脚本賞にノミネートされた『パスト ライブス/再会』。自身の体験をもとにした本作で長編監督デビューを飾ったセリーヌ・ソンさんは、オリジナル脚本とプロデュースも手がけて注目を集めています。多様な文化をバックグラウンドに持つソン監督に、今回の体験を通して感じたことや作品の意義について伺いました。 『パスト ライブス/再会』「縁=イニョン」で結ばれた3人の関係性【画像3枚】
『パスト ライブス/再会』STORY ソウルで生まれたナヨンは、クラスメイトのヘソンと初めての恋に落ちるが、お互いに思いは告げないまま、ナヨンは12歳のときに親の都合でカナダのトロントへ。英語名ノラとして、新たな人生を歩むナヨンは、24歳でニューヨークへ単身移住し、新進気鋭の劇作家として注目されつつあった。一方、ソウルにいるヘソンは大学で工学を学び、兵役中もノラのことが忘れられずにいた。そんなある日、二人はビデオチャットで12年ぶりに会話を交わすが、再びすれ違ってしまう……。
多文化の背景があることで、より生きやすくなったのかなと思います
ーー今年のアカデミー賞作品賞10本のうち、『パスト ライブス/再会』『バービー』『落下の解剖学』と女性監督作が3本ノミネートされたのは史上初です。 セリーヌさん:本当にすばらしいことだと思います。私は女性監督として楽しみながらこの作品を作れたし、すごく苦労したという印象はないのですが、それは道を切り開いてくれた数々の女性監督のおかげなんですよね。彼女たちが一歩ずつ、この業界に変革をもたらしてくれた。そうした先人たちの努力があったからこそ、こうして私も映画制作のコミュニティに受け入れてもらい、女性監督として活躍できています。 サンダンス映画祭でこの映画がワールドプレミア上映されたのは、もう一年以上前になりますが、今になってもこうやって作品について話せること、共有できることは私にとって、特別な体験になっています。本当に光栄なことで、ハリウッドを開拓してくれたすべての女性たちに感謝しています。 ーーご自身を反映した主人公のノラと同じく、12歳でカナダに移住したことは、どんな体験でしたか? また、韓国とカナダ、アメリカといった多文化を背景に持つことには葛藤などがあったのでしょうか。 セリーヌさん:若い頃に移住したので、恐怖よりも冒険ととらえていました。だからつらい経験というより、楽しい経験として思い出に残っています。大人になって住む国を変えるというのとは違う感覚なのかなと。 多文化の背景があることについては、最初はやはりひとつの枠にはまっていないという意味では、周囲の人たちとは違うので多少は不安を感じていたかもしれません。でも、次第に人種などに関係なく、誰もがひとつの枠にはまっているのではない、自分は特別じゃないのだと気づいたんですね。自分は決まったひとつの存在ではなく、いろんな側面があるということをより受け入れやすくなりましたし、そのことによって生きやすくなったのかなと思います。