【漫画家に聞く】深まる謎とまとわりつくような恐怖……ホラー小説の漫画化『とある峠道に存在した石塔の話』の絶望感
一見すると理解できない石碑は多いが、意味を知って驚愕することがある。そんな漫画作品『とある峠道に存在した石塔の話』がXに投稿された。ホラー作家・梨の原作『6』(発売元:玄光社)をコミカライズした『漫画版6』から切り取られたエピソードである。 人気原作を基にしたホラー漫画『とある峠道に存在した石塔の話』(漫画版6) 抑揚のない雰囲気が心に不穏さをもたらす本作で作画を務めているのが、古河コビーさん(@furuCoby)。脱サラ新人漫画家を自称し、現在は連載の準備をしている作家だ。その古河さんに『漫画版6』の制作について語ってもらった。(小池直也) ――本作の反響はいかがですか? 古河コビー(以下、古河):1話毎に独立したエピソードなのですが、単行本で6話繋げて読むと繋がっていることがわかる構造になっています。読者さんからは「各話は謎が多いけど、最後まで読むと腑に落ちる」というような声がありました。『とある峠道に存在した石塔の話』は私自身も書きながら、一番難解だなと感じた回です。 ――コミカライズはどんな経緯だったのでしょう。 古河:以前「ゲッサン」で、怪談風の読切作品『「ん」から始まる名前の子』を描いたんです。これを見つけてくれた編集さんが声をかけてくれました。実際に原作を読んでみたら、一般的なホラーにはない「この絶望は受け入れるしかないよね……」といった読後感。 お化けが出てくるのではなく淡々と進む印象でしたね。個人的には映画『千と千尋の神隠し』における電車の場面のような、美しいけど抗えない死に向かっていくようなイメージを想起しました。 ――作品とは裏腹に、古河さん自身は笑顔で明るい印象を受けました。 古河:ありがとうございます(笑)。ただの暗い話だとも思ってなくて、「こういう輪廻転生もあるよね」と考えながら描いていました。今は異世界転生して無双する作品が多いので、こういう死生観もいいかなと。 ――原作者と作画でどのようなやりとりを? 古河:最初だけ、ネーム担当の方と梨さんに解釈のすり合わせをしました。私は全体も2~3周読んでから臨みましたが、三者三様の意見で驚いたのを覚えています(笑)。だから読者の方を含めると、さらに色々な考え方があると思うんですよ。ただ「私はこう捉えました」という形でまとめたのが『漫画版6』になっています。 基本的に自由に描かせてもらっていますが、「キャラクターの感情を抑えて」や「グロくしないで」といったディレクションはありましたね。それを受けて、表情を無にしていった感じでした。 ――キャラクターデザインについてはいかがですか。 古河:個人的にキャラデザは一番好きな作業のひとつです。自分の創作では覚えてもらえる髪型などを意識しますが、本作は「どこにでもいる普通の人にしてほしい」という要望があり、あえて作り込んだりはしませんでした。 ――古河さん自身は「脱サラ新人漫画家」と自称されていますが、それについても聞きたいです。 古河:もともと大学生時代に描いていたんですが、デビューできずに就職。会社員時代は残業で描く時間もなく、毎日会社で泣いていて。漫画を再び描き始めたのはコロナ禍で週1出勤になった時でした。 退職した今は気が楽で仕事も楽しいし、もう会社員には戻れません(笑)。好きなことが仕事だと寝不足でも頑張れますね。今は初めての連載の準備をしているのですが、そのきっかけを作ってくれたのが『漫画版6』だったんです。 ――影響を受けた作家や作品は? 古河:雷句誠さんの『金色のガッシュ!!』で漫画を知って、映画『千と千尋の神隠し』にも大きなインパクトを受けました。 ――今後どんな漫画家になりたいですか? 古河:世界を含めたオリジナル設定のファンタジー物を、いつか描いてみたいと思っています。
小池直也