【高校野球】17年ぶりに秋の関東大会を制した横浜高 渡辺元智元監督からの祝福メッセージ
「生きていて、良かった」
【11月4日】秋季関東大会決勝 横浜高(神奈川)4x-3健大高崎高(群馬) (延長10回) 秋の関東大会で横浜高が17年ぶり4度目の優勝を遂げた。地元・神奈川開催。決勝では今春のセンバツ王者・健大高崎高を延長10回タイブレークの末、サヨナラで制した。 昨夏、今夏と神奈川大会決勝で逆転負けを喫した。「あと一歩」を課題として、全員で真摯に取り組み、その壁をついに乗り越えた。 サーティーフォー保土ヶ谷球場で試合観戦した横浜高・渡辺元智元監督が、祝福メッセージを寄せた。甲子園通算51勝。春3度、夏2度の全国優勝へ導いた名将の視点は鋭い。教え子の村田浩明監督は2020年4月就任。神奈川の県立高校を指揮していた村田監督を、母校再建のため、強く推薦したのが恩師である。冒頭で語ったのが「生きていて、良かった」。重い1勝だった。傘寿。80歳の誕生日翌日、母校から最高のプレゼントが届いた。
【渡辺元智氏メッセージ】 皆に支えられて、一番成長したのは村田ですよ。スタッフに恵まれ、選手がそこに付いて行った。勝てそうで勝てないジレンマがあって、そこで村田は試行錯誤したと思いますが、私から言えば、運よく、大きな戦いでミスをしながら勝てた。狭間の中での勝利というのは、人間を大きく成長させるもの。『負けない野球』が身についてきたのかな、と。 この決勝を見て、松坂時代を思い出したんです(平成の怪物と言われたエース・松坂大輔を擁し97年秋から98年秋の国体まで公式戦44勝無敗)。ウチが秋に優勝して、神奈川大学が箱根駅伝で連覇して、ベイスターズが優勝して……。社会の風潮、その一時代の中に横浜高校があって、その皆から押されて、勇気をもらった体験を思い出したわけです。 村田は常勝が求められ、伝統ある横浜高校の先輩たちが残したものに、立ち向かっている。監督として引き受けたのは、大変なこと。すべて一身に背負って、チームを指揮してきたと思うんですよ。でも、ちょっと気づいて、一人ではできない、と。高山(大輝、部長)ら指導スタッフのサポート、学校の理解があった。それが、大きかったです。 17年ぶりの関東制覇? 自分自身は、長生きをしていて良かったな、と(苦笑)。願わくば、甲子園で勝つことですが……。プロは勝たないといけない。高校野球からプロに行く選手もいれば、大学進学、社会人で野球を続ける生徒もいる。高校野球で終わる選手もいる。甲子園ではチーム全員で『良い野球』を展開してほしい。監督を退いて以降、ネット裏から解説や評論する立場で、高校野球を見てきました。そこで強く感じたのは、ただ、勝てばいいということだけでは、伝統は作れないということ。皆から応援され、愛され、好かれるような野球部にしないといけない。村田もそのあたりは十分、理解している。 監督に就任してから5年は相当、苦労している。この期間、体調を崩したとの報告もあり(村田から)『監督、ダメです。できません』と相談してきたこともある。そこからよみがえってきて、勝った負けた、という厳しい勝負の世界の中で、人として大きくなった。 勝つというのは、どういうことか。 負けるというのは、どういうことか。 負けがないと、勝ちは分からない。 生徒たちと接する監督として、誰もが通る道。それが、分かってきたのかと思います。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール