イギリス国会初の女性財務大臣、誕生なるか?レイチェル・リーヴス議員にズームイン
一方で、政治と経済において女性のロールモデルが少ないという事実は、この分野を志す人々に対する参入障壁になることを彼女は痛感している。これまでの歴史の中で女性が成し遂げた功績や、近年の女性の活躍をたたえることは、今後この分野に名乗りを上げる人材を増やすことに関わってくる。そんな思いから、彼女は最新の著書『The Women Who Made Modern Economics(現代経済学を作った女性たち)』を出版した。偉大な女性経済学者たちに光を当て、歴史の中で忘れ去られたり意図的に消されてきた女性たちの功績を復活させたいと筆を取った。 「自分が経済学を学んでいたころのことを振り返ると、女性が執筆した教科書はただ一冊しかなく、しかも共著。女性経済学者による理論について聞いたこともない。私は、『彼女たちは歴史から抹消されたのだろうか、存在しなかったのだろうか』と考えていました」 経済界の要職に女性が少ないということは世界的な問題だが、ことイギリスではその傾向が目立つ。 「イギリスは今でもビジネスをするのに最適な場所ですが、その利点のいくつかが失われつつあります。イギリスには強力な産業遺産があり、優秀な大学があり、熟練した労働力があり、起業家もたくさんいる。だから、私たちがビジネスの分野でリーダーになれない理由はないのです」 彼女は「セキュロノミクス」と名付けた、独自の経済戦略を掲げている。その定義は、世界的な紛争やパンデミックなどによるショックにあらがう経済の構築̶ 彼女の言葉で表すなら「安全で、逆境から回復可能な国民経済を作っていくこと」だ。 「外国、特に私たちと価値観を共有しない国への依存度を下げたいと考えているんです。国内産業への投資を増やすことにより、ちゃんとした額の賃金を支払う雇用を増やす。そうすることが、家計の立て直しにも役立つ……。こんなふうに計画しているのです」 このゲームは、きっと長期戦になるだろう。彼女が言うところの「財政のひどい現状と、何度も繰り返されてきた政策の切り刻みと変更」というこれまでを思えば、なおさらのこと。しかし、チェックメイトで勝つのは、彼女をおいてほかにはいないだろう。 「私は、財務大臣の役割と、そこで自分にできることをずっと考えてきました。多くの時間を費やして。そして今やっと、スタートラインに立っているんです」
From Harper's BAZAAR March 2024 Issue