CHAdeMO規格なのにコレじゃメリットないじゃん! 同じCHAdeMOでも外部給電できないEVがある理由
CHAdeMO規格は双方向給電に対応
EVへの急速充電は、CHAdeMO(チャデモ)という規格が一般的だ。テスラやフィアットなど、一部の輸入車ではCHAdeMO以外の仕様をもつEVもあるが、それらもアダプターを使用すればCHAdeMO規格の急速充電器で充電することができる。つまり、日本での急速充電といえばCHAdeMO規格がデファクトスタンダードということになる。 【画像】さまざまな規格が乱立する急速充電の未来 CHAdeMOは2010年に日本発の規格として誕生した。名称の由来は「CHArge de MOve」(動く=充電する)という意味のフランス語からきており、また「お茶でも飲みながら充電しましょう」という意味も込められている。規格の開発には、東京電力(現・東京電力ホールディングス)を中心に、日産自動車、三菱自動車、富士重工業(現・SUBARU)、トヨタ自動車が参画した。 当初は最大出力50kWだったが、現在では最大400kWまでの出力に対応する規格へと進化している。また、車両からの放電(V2H/V2L)にも対応している点が大きな特徴である。 CHAdeMO規格の最大の特徴は、直流による急速充電方式を採用している点だ。交流(AC)による普通充電と異なり、直流(DC)による急速充電では、充電器側で交流から直流への変換を行う。これにより、車両側の機器が簡素化され、低コストで製造できるうえに充電時間も大幅に短縮できる。 また、CHAdeMO規格では充電時の安全性を重視している。充電コネクタには専用の通信線が組み込まれており、車両と充電器の間で常時通信を行いながら充電を制御する。これにより、充電中の異常を即座に検知し、安全に充電を停止することができる。 さらに、この通信機能を活用することで、双方向の電力のやり取りが可能となっている。つまり、車両から外部への給電(V2H/V2L)も技術的には可能な規格となっているのだ。V2Hとは「Vehicle To Home」家庭で別途V2H機器を介して電力を供給できる。また、V2Lは「Vehicle to Load」のことで、可搬型の機器を利用して災害地などで給電できる。 ここで疑問となるのが、CHAdeMO規格を採用しているにもかかわらず、外部給電機能をもたない車両が存在する理由である。これにはおもに以下の要因が関係している。 第一に、車両側のインバーター設計の違いがある。双方向の電力変換に対応するためには、それに適した設計のインバーターが必要となる。しかし、多くのEVはコスト削減や車両の軽量化を優先して、あえて充電専用の単方向インバーターを採用しているのだ。 第二に、バッテリーマネジメントシステム(BMS)の仕様の違いがある。外部給電時にはバッテリーの状態をより厳密に管理する必要があり、それに対応したBMSを搭載していない車両では外部給電機能を提供できない。 第三に、メーカーの製品戦略が関係している。外部給電機能は、災害時の非常用電源としても注目されているが、すべてのユーザーが必要とする機能ではない。そのため、グレードによって機能の有無により価格をわけているケースもある。 このように、CHAdeMO規格自体は双方向給電に対応しているものの、実際に外部給電機能を提供するかどうかは、車両側の設計思想や製品戦略により決定されているのである。急速充電インフラの整備が進むなか、今後は外部給電機能を標準装備とする車両が増えていく可能性もあるだろう。
琴條孝詩