24年のコンテナ船竣工が過去最多 供給過剰は顕在化せず
2024年のコンテナ船の新造船竣工量は300万TEUに迫り、過去最多を大幅に更新する見通しだ。国際海運団体BIMCO(ボルチック国際海運協議会)の集計によると、1―10月に積載能力250万TEU相当の410隻が竣工し、通年で過去最多を記録した23年実績の230万TEUを既に上回った。BIMCOは年末までにさらに50万TEU程度が引き渡されると予測している。コンテナ船の運賃市況は今年前半に急騰した後、7月をピークに軟化していたが先月末に反発。船腹供給の過剰感は足元では顕在化していない。 コンテナ船は21―22年にかけての運賃市況の未曽有の高騰を受け、新造船の発注が激増。発注残が一気に積み上がり、「その竣工がピークを迎える今年は船腹の供給過剰も懸念されていた」(市場関係者)。 しかし紅海攻撃の長期化を受け、スエズ運河航行を回避した喜望峰経由の迂回(うかい)航海が常態化。これによるトンマイル拡大がスペース供給の増加分を吸収し、船腹のタイト感が強まって年前半は運賃市況の高騰が続いた。 BIMCOによると足元のコンテナ船の船腹量は、老齢船の解撤が低水準にとどまっていることで年初から240万TEU増加し、6699隻・3040万TEUとなった。 船腹量はコロナ禍前の20年初めから32%増と急速に拡大しているが、船主は新造船の発注を継続。今年初めからの新造船の契約件数は昨年の通年実績の2倍以上となっており、286隻・330万TEUが発注残に加わった。 足元の発注残は、既存船隊の25%に相当する760万TEU。6月初めには590万TEUにまで落ち込んでいたが、年後半に新造発注が再び増加に転じた。 発注残全体では、直近のピークだった23年初めの780万TEUには及ばないものの、オーナーオペレーター(船主兼運航船社)による発注残は590万TEUと過去最高水準になっている。 BIMCOは「オーナーオペレーターが全体に占めるシェアは発注残で78%であるのに対し、既存船腹量では60%にとどまる。オーナーオペレーターの船腹量は今後、専業船主より速いペースで増加を続けるだろう」とみている。 市場関係者によるとコンテナ船のオーナーオペレーター、すなわち世界のメガキャリアは、喜望峰経由の迂回が縮小し航行ルートが正常化すれば、短期的には船腹供給に過剰感が出かねないことは想定しているとみられる。 それでも海運ブーム期に大量発注された1万TEU前後の中大型船の老齢化が進む中、中国造船所の船台が埋まってきたこともあり、中期的な船隊拡大と環境投資の積極化を掲げる複数社が新燃料船へのリプレースに動き出しているようだ。
日本海事新聞社