「最初はウソかなと。そしたらホントだった」2軍出場直前の秋広 緊急昇格で平塚から所沢まで猛ダッシュ
◆日本生命セ・パ交流戦 西武1―7巨人(2日・ベルーナドーム) この好機を逃すわけにいかなかった。熱き思いを胸に宿し、緊急昇格した秋広が突破口をこじ開けた。両チーム無得点の5回1死。1ボールからボーの真ん中低め147キロ直球を左前に運んだ。小林の一犠打で二塁へ進むと、立岡の左前適時打で生還。先制のホームを踏んだ。背番号55の一打が口火となり、この回3得点。「ヒットが点数につながったので、そういう意味ではすごくいいヒットだったと思う」と、声を弾ませた。 突然の朗報だった。イースタン・DeNA戦に出場するため、午前8時に寮から平塚へ出発。試合に向けて球場でストレッチなどの準備を終えた時に声がかかった。 「野手ミーティングに参加しようと思ったら、『ベルーナに行ってこい』って言われたんで、最初はウソかなと思った。そしたらホントだったんです」 2軍マネジャーから今季2度目の1軍行きを告げられた。坂本の腰のコンディションを考慮しての緊急昇格。「7番・一塁」でスタメン入りも伝えられた。驚きもあったが、それ以上に気合がみなぎった。 用具車に乗り込み、球団スタッフの運転で移動。野球道具の忘れ物はない。細心の注意を払った。心は熱く、頭は冷静。「先発投手の映像見たりしました」。約1時間30分の道中で、イメージを膨らませた。 グラウンドで阿部監督にあいさつしたのは、午前11時55分。試合開始わずか1時間5分前で練習終了までは残り25分だった。「時間がないなりにいい準備ができたと思います」。ティー打撃、ノックなどを慌ただしく行いながらも準備を整えた。 急に巡ってきたチャンスだったが、落ち着いていた。自信を持って取り組んできたからだ。2軍降格の際に二岡ヘッド兼打撃チーフコーチからは「(打撃の)形は悪くない」と伝えられ、その言葉を胸に直近6試合で16打数7安打、打率4割3分8厘と打ちまくった。あとは1軍で結果を出すだけだった。 試合前の円陣では声出しで鼓舞し、バットでは快音を響かせた。それでも阿部監督は「1本打っても、2本目をいつも打てないので、そのあたりは厳しく見ていこうと思っている」。期待しているからこその辛口評価だ。秋広も「継続していい結果を出せるように」。昨季10発の期待の大器が逆襲へドタバタながらも好スタートを切った。(宮内 孝太)
報知新聞社