多くの人に伝えたい、社会人チームの熱量(社会人バスケ・山形銀行ライヤーズ 木林稚栄HC)
Wリーグサマーキャンプは、Wリーグ以外のカテゴリーで戦うチームにとってはより貴重な機会だ。もちろん、14チームしかないWリーグのチームと対戦できるからである。ただ、Wリーグ側もチーム数が少ない分、各チームは実戦の機会を求めて大学や社会人の強豪と練習試合を組むことも多い。山形銀行でいえば、木林稚栄ヘッドコーチにとって古巣戦となったENEOSとの対戦も、今回のサマーキャンプが初めてだったわけではない。 「先週も先々週もENEOSと試合したんです(笑)。もともと私が現役のときから、ENEOSは6月くらいに東北遠征をするんですよ。今年もやるのが決まってて、その後にサマキャンの相手を見て『あら、次の週もだね』って(笑)」 非公開で行われる練習試合とWリーグサマーキャンプでは、対戦相手が同じでもやはり勝手は違う。山形銀行はこれまでもサマーキャンプやオータムカップに参戦しているが、武蔵野の森総合スポーツプラザという大きな会場だったことも含め、普段の試合と同じようにプレーするのは簡単ではなく、試合は59-82と23点差をつけられた。ただ、大切なのはこういう舞台に立てるということだ。 「先週やったばかりだからちょっと気持ちの余裕を持ってできるかなと思ったんですけど、Wリーグの人たちがいっぱいいる舞台でやっぱり緊張してましたね。でも、それも良い経験かなと思います。こんなにお客さんが入ることは社会人リーグだとあまりないですし、3面ある中で、うちはENEOSと対戦して、隣ではデンソーが試合してて、こういう場に来れるのは嬉しいです。試合の配信も社会人は基本的にないですし」 木林HCが言うように、チームにとってはまたとない機会。格上の相手に胸を借りることは何よりも成長を促し、チームを作る上では必要な過程と言うことができる。 「自分たちのやりたいこと、スタイルをしっかりやってみよう、チャレンジの3日間だということは選手たちに言ってます。カテゴリー的には負けて当たり前ですし、競れたら嬉しいし、勝ち星を拾えたらもっと嬉しいし、別に30点差、40点差で負けようが何かあるわけでもないんだから、『1コ1コのプレーでチャレンジしにいこうよ』って。具体的には、ライヤーズのハードなディフェンスで、チャンスがあったらどんどん仕掛けにいって、そこからブレイクを出すこと。あとは、今日はちょっと上手くいかなかったですけど、ドライブで切っていくのが得意なガードが多いので、スペースを作って積極的に狙うこと。それでブロックされるのも経験なので、どんな相手でも自分たちがやりたいことをやれるかどうかチャレンジしようというのがテーマでした」 第3クォーター終盤から第4クォーター序盤にかけては、トラップディフェンスから速攻に転じる場面が多く見られ、木林HCの思惑に選手たちが応えることができた。「欲を言えば『最初からやろうよ』とは思いますけど」と言う木林HCも、Wリーグのレベルの高さ、とりわけ古巣の強さをよく知っている分、良い感触を得ることはできたようだ。