絶望的に硬い体が「たった1分、顔をさするだけ」で柔らかくなる納得の理由
● 県大会最下位だった私が 「力を抜く練習」で優勝 私が「脱力の大切さ」を感じたのは、今から30年以上前の高校生の時でした。当時は運動神経が悪い子どもで、体育は5段階評価で「2」の成績。身長170センチで、体重45キロという痩せっぽちです。漫画家を目指していたのですが、とても物にならないと壁にぶつかっていたときに、先輩に誘われて陸上部に入部しました。 「やり投げ」の選手として初めて陸上大会に出場したときのこと。予選では、3投を投げられます。1投目、2投目の結果で決勝進出への希望が断ち切られたので、3投目は悔いのないように思いっきり投げようと思いました。ウォーと叫んで力いっぱい投げると、自分の頭に矢がパコーンと(笑)。県大会最下位の成績でした。 それまでの練習でも筋トレでは運動能力が上がらないと感じていたのですが、この大会で力んではダメだと実感したのです。これが私の脱力を重視する原点です。そしてそこから力を抜く練習に切り替え、2年後には県大会で優勝しました。しかも大会新記録の成績です。 ただこの頃は、力を抜く定義、その方法が曖昧でした。 ● 科学的なトレーニングをしたら 成績が落ち、怪我が増えた 高校を卒業してトレーナーの専門学校に入学してから筋肉について勉強をするうち、やはり力を入れる練習のほうがいいのかと、再び筋トレに励むようになります。ぐんぐん筋肉量が増えました。重りも持ち上げられるようになります。けれども瞬発力、走力などの運動能力が目に見えて落ちていきました。 専門学校では科学的なトレーニングをしているのに、我流で練習していた高校時代よりも運動成績が悪くなったのです。怪我(けが)も増えてしまい、どのような練習をすればいいのかと悩んでいました。 専門学校卒業後はトレーナーの仕事をしながら、格闘技を始め、総合格闘技やK-1に出場しましたが、そのときも「力が入りすぎてるぞ!」とコーチから言われ、どうすれば試合中に力が抜けるんだろうともがいていました。 そんなある日、眼窩底骨折(眼球周囲の骨折)という大怪我(けが)をしてしまいます。患部にチタンプレート(留め具)を入れる手術を受けました。術後、病院の医師に「何かしてはいけないことはありますか」と尋ねると、「力んではダメ。眼圧が上がるから」と言われました。そのとき初めて筋トレは眼圧を上げる、目に負担をかけるものなのだと気づいたのです。 半年間、力まないように筋トレではなく軽い体操でトレーニングをしていました。すると傷が治って競技に復活したときに驚くほどパフォーマンスが上がりました。ムキムキの筋肉は落ちましたが、動きはいいし、息切れはしないし、半年ぶりに格闘技の練習をしても筋肉痛がない。力を抜いてトレーニングする良さを感じたのですが、実戦ではやはり力を入れないと負けてしまいます。試行錯誤の日々でした。 その頃、武術指導者として著名な甲野善紀さんが「一般向けの体験会」を開催していたので面白半分で参加したのです。