非公開での政治裁判...都合が悪いプーチンの「強硬すぎるやり方」と、女性ジャーナリストの「拳銃より強力な抵抗」
「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。 【写真】習近平の第一夫人「彭麗媛」(ポン・リーユアン)の美貌とファッション ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。 長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』(マリーナ・オフシャンニコワ著)より抜粋してお届けする。 『2022年のモスクワで、反戦を訴える』連載第39回 『肥満ヘビースモーカーに、泣き止まない女...政治犯扱いのジャーナリストが経験した、ロシア刑務所の「衝撃的な現実」』より続く
犯罪者の扱い
この時、重たい扉が開き、部屋の入口に金属探知機を持った女性があらわれた。彼女の姿を見ると、また神経性の咳の発作が始まった。女性はわたしの前で金属探知機を振り回した。紙は幸い反応しなかった。禁制品が見つからなかったので、女性刑務官は出て行った。 重たく息をしながら、わたしは鉄のベンチに座り、落ち着こうとした。1時間、2時間、3時間が過ぎた。この小さな部屋には次々と新たな被告たちが連行されてきた。ほとんど全員の女性が経済犯罪だった。時間が来ると彼女たちはまた連れていかれた。わたしはずっと座り通しだった……。夕方になってようやく、ドアが開き、黒いマスクをした、体の大きな4人の護送官があらわれた。 「外に出ろ」その中の一人が命じた。「2階に上がれ」 手錠をされたまま、わたしは大勢の記者たちの中を歩かされた。カメラのフラッシュがたかれた。この時考えたのは、わたしの子供たちもこの映像を目にするな、ショックは大きいだろうな、ということだった。子供たちに、ママは他の何十人ものロシアの政治犯と同じように、犯罪者ではないのだといつか説明することができるだろうか。 護送官はわたしをガラスの檻に座らせた。これまでこういう檻は映画の中でしか見たことがなかった。
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