「図書館の自由宣言」から70年 検閲、権力介入との闘いは今も
暴力は「図書館の敵」
講師の木村さんは自己紹介を兼ねて、母親が図書館司書だったと語り、図書館は「私にとって特別な場所」と振り返った。 その上で、宣言の1項から4項までを憲法とのかかわりから意味づけ、「図書館の自由とは間違いなく闘い。自由を守る方針というのは、非常に大事」と指摘。あいちトリエンナーレ2019の企画展「表現の不自由展・その後」の展示に対する放火やテロなどの脅迫行為にも触れ、「暴力は『図書館の敵』」と語り、図書館界が団結して闘うことの大切さを指摘した。 自由宣言の策定には、破壊活動防止法制定との関連があった。1975年に刊行された『図書館と自由 第1集』(日図協刊)によると、破防法案が国会に上程されていた52年5月、図書館大会で反対決議を模索する動きがあった。実現はしなかったものの、54年には日図協事務局長が「急角度の時勢の変更に伴って図書館の本質である自由、中立性が刻々侵されそうになっており、時と共にその度合いが深刻になるであろうと予見される」との問題意識を表明。その危機感が「図書館の自由宣言」として結実したという歴史がある。 とりわけ公共図書館は市民の知る自由に奉仕する、民主主義を体現した場だ。行政内部にあっても権力から遠い存在といっていい。だからこそ利用者は読書という心の内面をさらしても安心できるのだ。“古希”を迎えた自由宣言の価値をあらためて噛みしめたい。
長岡義幸・フリーランス記者