JR飯山線に今秋、SLが復活 長野・新潟の沿線活性化へ検討
長野県と新潟県を結ぶJR飯山線に今秋、蒸気機関車(SL)をイベント運行する見通しになり、長野県飯山市などが今月、「JR東日本と検討を始める」と発表しました。かねて地元の市民団体などが実現に向けて運動しており、SLファンに応えるとともに、沿線地域の活性化を図るきっかけにしたいと関係者は期待しています。 【写真】学校や公園の「D51」ピンチ? 保存が課題に 全国では荒廃例も
11月ごろめどにイベント運行へ
長野県の長野市、飯山市、新潟県の長岡市、十日町市など両県の自治体などで構成する「飯山線沿線地域活性化協議会」の発表によると、今年の秋を目標としてJR飯山線の飯山駅(長野県側)~長岡駅(新潟県側)間でSLを運行することでJR東日本と検討を始めることになりました。運行車両はSLと客車3両を予定するとしています。SLの運行では、沿線自治体などが協力して受け入れ態勢や沿線の警備などについて調整を進める予定です。
飯山線の長野県側の区間でSLが走るのは1972(昭和47)年以来、44年ぶりの復活。JR東日本広報部は「乗務員の確保、安全対策、沿線警備などの課題を検討することになります」と話し、SL運行の目標を「11月ごろ」としています。 SLは全国各地でイベント運行が行われているほか、大井川鉄道、真岡鉄道、秩父鉄道などで運転されています。JR東日本の場合は上越線で「SLみなかみ」を土日を中心に、信越本線では「SL碓氷(うすい)」などを同様に運転しており、根強い人気を保っています。飯山線での運行はSLファンの関心を集め、にぎわいが予想されます。
SLは機関車自体が古い上、石炭や水で動くアナログ構造のため、精密な検査をする施設や技術者が必要です。運転、検査、補修の技術の継承にも多くの費用や人材が必要になるため大きなコストがかかります。イベントなどで運行する場合は、ほかの路線で運行しているSLを手配して回してもらうなどの調整も必要になります。 さらに、最近は熱心なSLファンの写真撮影や見物で駅や沿線、踏切周辺が混雑してトラブルが発生することもあります。SLを運行する際は、踏切や撮影の人気場所ごとに警備員を配置して事故防止にあたるなど多数の人員が必要になります。このため今回の運行計画でもJRのほか沿線自治体などの安全対策が課題になりそうです。
飯山線は長野市の豊野と新潟県長岡市の越後川口間を結び、豊野~長野間のしなの鉄道区間乗り入れを含め約96キロを区間を結ぶ山間路線です。ローカル線のため、沿線の温泉や郷土料理などを組み合わせた観光列車「おいこっと」を運行するなど利用客増の取り組みを進めています。 また、北陸新幹線の飯山駅が昨年、飯山線飯山駅と併設されたため、地元の飯山市を中心に新幹線利用の観光振興にも力を入れています。それだけにSLのイベント運行は地域おこしにはずみをつけるものとして期待されています。 (高越良一/ライター)