【コラム】「引き算政治」の末に戒厳の悪手、崖っぷちに立った保守=韓国
韓国の12・3非常戒厳宣言の不法性を捜査する共助捜査本部が20日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に2回目の出席要求書を送った。国会の弾劾訴追案可決(14日)に続き内乱首魁および職権乱用容疑でクリスマス当日に調査を受けるよう通知を受けた。これに先立ち、18日高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の1回目の出席要求に応じなかったので、今回も出席は未知数だ。18日に満64歳の誕生日だった尹大統領が生涯最悪のクリスマスプレゼントを受け取った格好だ。 職務停止状態でソウル竜山区漢南洞(ヨンサング・ハンナムドン)大統領官邸に事実上幽閉された尹大統領は今何を考えているだろうか。すべてを賭した戒厳賭博が未熟な進め方で中止になったと言って嘆いているだろうか、あるいは不正選挙勢力を全員捕まえて一掃しようとしていた自身の深い意味を思い至っていないと国民を恨んでいるだろうか。 尹大統領は7日の国民向け談話で「戒厳宣言に関連し、法的・政治的責任を回避しない」と約束したことを実践しなければならない。賛弾と反弾で国民が半分に分かれて寒い街頭に出てきたが、一抹の責任感でも感じているなら、調査に誠実に臨むことが道理だ。あわせてその合間を見ながら、事態がここまで絡まってしまった経緯を一つずつしっかりと振り返り、痛烈な自省の時間を持たなければならない。 国民を失望させた文在寅(ムン・ジェイン)政府の政権再創出を防ぎ、2022年5月に就任した時だけでも尹大統領は豪気であふれていた。大統領選挙は0.73%ポイント差の薄氷勝利だったが、同年6月第2週支持率は53%で最高値を記録して6・1地方選挙で圧勝した。2017年朴槿恵(パク・クネ)大統領弾劾で支離滅裂になった保守勢力はわずか5年で立ち直り、捲土重来に成功した。 朴槿恵弾劾以降、非主流に転落した保守勢力は文政府の一方通行暴走に対抗した「検察総長・尹錫悦」という政治新商品を掲げた。尹錫悦候補は策士である李俊錫(イ・ジュンソク)と金鍾仁(キム・ジョンイン)の選挙戦略の助けを受けて、終盤に中道の安哲秀(アン・チョルス)氏との単一化で大統領選挙勝利ドラマを書いた。だが、思いがけない勝利に陶酔して己惚れたためか、それほど経たずして尹政府は下り坂に入り、ついには弾劾悲劇を避けられなくなった。失敗の原因は、自身に対抗していると言って保守陣営内部の主要政治家さえ包容できず敵対視した尹大統領の引き算政治に求めなければならない。 地方選挙勝利1カ月後の2022年7月、国民の力倫理委員会は尹大統領と不協和音を奏でた李俊錫党代表に党員権停止6カ月の懲戒処分を下した。李俊錫は4・10総選挙を控えて国民の力を離党して背を向けた。尹大統領が与党を自分の好き勝手にしたため、国民の力は過去2年半の間、朱豪英(チュ・ホヨン)・鄭鎭碩(チョン・ジンソク)・韓東勲(ハン・ドンフン)らの非常対策委体制が続いた。非正常の日常化だった。 大統領候補単一化の時、共同政府を約束したのに、執権以降は最初から安哲秀を徹底的に排除した。安哲秀はどれくらい鬱憤が積もっていたのか、公開的に弾劾支持を宣言し、これ見よがしに国会本会議場を座った。大統領と与党の葛藤は総選挙過程でも濾過なく現れ、国民は与党を見て安定感よりも不安感を感じざるを得なかった。数回際どく衝突した「尹・韓」は結局弾劾で離れた。非常布告令発令状況で韓東勲逮捕・射殺デマが根拠もなく出てきたわけではなさそうだ。 引き算政治で孤立無援に陥った状況で、尹大統領は戒厳宣言を通じて四面楚歌の窮地を一挙に脱出したかったようだ。事あるごとに国政の足を引っ張ってきた李在明(イ・ジェミョン)の民主党と韓東勲を一気に排除したかったようだ。だが、非民主的で時代錯誤的な妄想にすぎない。一角でユーチューブ(YouTube)アルゴリズムとアルコール中毒を原因としているが、根本問題は民主主義と自由をしっかりと血肉化できなかった古い不通リーダーシップのためでないかと思う。 保守勢力は2017年初め朴槿恵弾劾時点の壊滅的水準に戻るようだ。廃族という話が出るほどなので、当時よりもはるかに厳酷で絶望的な状況だ。保守勢力が叫んだ憲法価値と自由民主主義が葬儀を行う状況だという嘆きが聞こえる。 保守はこのまま絶滅するのだろうか。偽の保守が死んでこそ真の保守が生きる。公正と常識を生き返らせなければならない。「内乱特検」にしろ「金建希(キム・ゴンヒ)特検」にしろ正面から向き合わなければならない。内部分裂をたくらんで自分の政治実利だけ取りまとめようとする日和見主義者などを遠ざけなければならない。偽の保守がごみ箱に投げ入れた保守の品格を生き返らせて、きれいに洗濯しなければならない。弾劾列車が出発すると早期大統領選挙が議論される。李承晩(イ・スンマン)大統領は正しかった。一丸となれば生き残り、バラバラになれば死に絶える。引き算の政治を足し算の政治に変えなければならない。そうしてこそ大韓民国が生きる。 チャン・セジョン/論説委員