投資詐欺被害に遭いやすい人ってどんな人?
なぜ振り込め詐欺にひっかかるのか?
また、電話がかかってきて「事故を起こした」だの、「会社のお金を使い込んでしまった」だのと言って緊急にお金を振り込ませる、いわゆる「振り込め詐欺」も後を絶ちません。しかも最近はどうやらかなり手の込んだ演出をしてくるようですから、用心していても引っかかってしまうケースが多いようです。これについては行動経済学における「注意の焦点化」という心理が作用しているのではないかという気がします。 「注意の焦点化」とは、「人が物事を判断するときに、示された刺激に集中するあまり、その他の部分には注意がいかなくなること」を言います。 例えば、前述のように「事故」だの「使い込み」だのという尋常ならざる事態を告げられると、その事実の衝撃のみに注意がいってしまいます。 「本当に息子の声だったのだろうか?」とか「使い込みといってもどうして、すぐ振り込む必要があるのだろう?」という具合に、少し冷静に考えてみると不審に思うようなことがらも、最初に示された衝撃の大きさのために注意がその一点に集中してしまっているのです。実際に被害にあった多くの人が、「電話の内容を聞いた瞬間に焦ると共に頭が真っ白になってしまった」と証言していることからも、どうやらこの「注意の焦点化」というのは、振り込め詐欺の被害に遭ってしまう人に共通の心理現象と言えるでしょう。
大阪のおばちゃんに学びたい、詐欺に遭わないコツ
では一体どうすれば金融詐欺にひっかからないようにすることができるのでしょうか。よくいわれるのは、「金融詐欺に遭うのは知識がないからだ」ということですが、私はそうは思いません。知識がなくても常識で考えることができれば、だまされる可能性は少なくなります。かつて年金基金でAIJ投資顧問という事件があったときでも、「リーマンショックのときもマイナスにならずにプラスの収益を続けていた」というAIJの説明に対して、「いくらなんでもそれは常識的にあり得ない」と思った人は被害に遭っていないはずです。当時、私も複数の年金基金に取材しましたが、「そんなことは常識ではありえない」と考えた人は一切勧誘にはのらず、被害も防げています。 さらにその金融商品の仕組みがわからなければ徹底的に納得するまで聞くということも必要です。一般的に金融詐欺に遭う人は大学教授や企業役員であるケースが多いそうですが、おそらく彼らは自分が知らない、理解できないということはプライドが邪魔をして、言えなかったのでしょう。大阪のおばちゃんが金融詐欺や振り込め詐欺に遭わないと、よくいわれるのは「そんなん、わからへんわ」と素直にいえるからなのだろうと思います(笑)。 このように金融詐欺や振り込め詐欺に遭わないための方法はいろいろあると思いますが、先日、警察の方とお話をしていたときに、「いくらこういう対策をとったり、心理的な罠に陥らないように気を付けたりしていても騙されるときは騙される。絶対に被害に遭わないようにするためには“最強の方法”があります」と言われたので、「それは一体どうすればいいのですか?」と聞いたところ、答えは「外からの電話には一切出ないこと!」だそうです。なるほど、納得です。 (経済コラムニスト・大江英樹)