冷凍食品に広がる国産野菜 輸入品と差別化 有機ホウレンソウやとろろも
現代の食生活に欠かせない冷凍食品で、国産青果物のバリエーションが広がってきた。ミックスベジタブルや果実など、輸入品が大半を占める商品に国産の新商品が登場。希少な有機野菜、使い勝手やデザインにこだわった品も人気を集める。輸入品との違いを強調した各社の工夫を探る。 【画像】 国産では希少な有機栽培の冷凍ホウレンソウ
野菜ミックス、イチゴも
ニチノウ(茨城県かすみがうら市)は2021年、国産の冷凍青果ブランド「mikata(ミカタ)」を立ち上げた。商品は20を数え、取扱店舗は3000に広がった。 売れ筋は、3品目をみじん切りした「彩り野菜ミックス」。ニンジンにタマネギ、ピーマンと輸入品に少ない取り合わせが特色だ。包丁が不要な便利さ、チャーハンやハンバーグなど用途の広さで、リピーターを増やす。 今秋、国産では希少なイチゴ、ブルーベリーも発売した。イチゴは食べやすいクラッシュタイプで、一粒丸ごとが多い輸入品と差別化。井上麻知子ブランドマネージャーは「客層に合わせて輸入品と国産を併売する店が増えている」と話す。
500ヘクタールで自社生産
イシハラフーズ(宮崎県都城市)は、冷凍では輸入が大半の有機野菜で国産化に挑戦する。主力は有機JAS認証を取得したホウレンソウ。生鮮品のような歯応えを訴求する。 野菜は大半を自社で生産し、面積は500ヘクタールに及ぶ。石原祥子社長は「栽培から収穫、加工、包装まで自社で貫徹し、畑から食卓までのストーリーを伝えたい」と強みを話す。
少数世帯向けにとろろ
冷凍とろろを製造する中里青果(青森県五戸町)は22年、「imonoutaだしトロロ」を発売。ゼリー飲料のようなパウチ型容器とし、ユニークな商品ロゴをあしらった。 少人数世帯での使いやすさを考え、容量は200グラム。「幅広い層に食べてもらうため、とろろらしくない商品にした」(中里琢美専務)狙いが奏功し、スーパーやネット通販で着実に販売を伸ばす。 ◇ 農水省によると、冷凍野菜の国内流通量に占める国産割合は5%。高まるニーズに対し、供給はまだ少ない。 冷凍食品PR連盟は11月、国産冷凍野菜の魅力を広めようと「全国冷凍野菜アワード」を初開催した。“冷凍王子”こと西川剛史会長は「旬の時に収穫し急速凍結する国産は、おいしく栄養価も高い。長期保存でき、一年を通じた計画的な生産も可能だ」と農業振興への寄与に期待する。 (橋本陽平)
日本農業新聞