スーパーチャージャーが「別物」に変える モーリス・マイナー(2) 驚くほどのチューニング効果
チューニングでフィーリングは完全に変わる
坂道へ差し掛かっても、シフトダウンの必要はなし。むしろ、加速していく余裕すらある。後期のAシリーズ・エンジンを搭載したマイナー 1000と同様に、洗練性を保ったまま、流れの速い郊外の道を運転できる。 プッシュロッドの金属的なノイズが、キャビンへ伝わる。サイドバルブとは異なる響きで、耳に心地良い。アルミ製のアルタ・ヘッドを積んだマイナーは、約20台が現存すると考えられている。 「このチューニングで、クルマのフィーリングは完全に変わりました。とても扱いやすくなりますよね」。とニューウェルは説明する。 「以前に乗っていたマイナーには、デリントンのシルバートップ・キットが組まれていましたが、比較にならないほど違います。アルタ・ヘッドの装備は、918ccのマイナーから本来のパフォーマンスを引き出す、最も簡単な方法といえるでしょう」 「最高速度以上に、中間加速の向上が大きいです。3速でのたくましさは、とても印象的なものですよ」 このヘッドの登場により、一層の動力性能を追求することも可能になった。キース・ラック氏が所有する、プラチナ・グレーの1949年式マイナーには、スーパーチャージャーが載っている。 エンジンはバランス取りされ、軽量化。4分岐の排気マニフォールドが組まれ、SUキャブレターの隣にショロック社製のスーパーチャージャーが追加されている。ブースト圧が4psiの時の最高出力は、66psに達するそうだ。
本調子でなくても簡単に100km/hへ到達
あいにく、ラックのクルマは不調だった。混合気の調整が悪く、プラグも汚れていた。それでも、勇ましいサウンドを放ちながら、ストレートでは簡単に100km/h超え。自然吸気より、たくましいことを簡単に体感できる。 「スーパーチャージャーは、まったく別物に変えます」。ラックが微笑む。 「アルタ・ヘッドのメリットとして、運転のしやすさが得られたうえに、ブロワーがトップエンドの力強さを加えます。この組み合わせで、一層豊かなトルクを引き出せ、現代の交通環境にも対応できます。坂道でも、問題なく速度を維持できますよ」 本調子ではなかったとしても、アルタ・ヘッド+スーパーチャージャーというタッグの魅力は大きい。雨天で浮かない気分を吹き飛ばすほど。 同時に、自然吸気版の優秀ぶりにも感心させられる。適度に活発で、ドライバーに優しい。70年以上前に、高く支持されたチューニング・メニューだったという事実を、理解できる。 一方で筆者は、オーバーヘッドバルブのシリンダーヘッドを載せた、ウーズレー・エンジンの活発さも知っている。得られる動力性能や全体的な特徴は、アルタ・ヘッドを積んだマイナーのエンジンと、非常に良く似ている。 1948年に、モーリス・モーターズが望ましいエンジンを準備できていたら。理想的なマイナーを、当初から量産できていた可能性は高い。優れたアルタ・ヘッドは、そんなことを想像させるスグレモノだった。 協力:モーリス・マイナー・オーナーズクラブ、グラハム・ホルト氏
ジョン・プレスネル(執筆) ジョン・ブラッドショー(撮影) 中嶋健治(翻訳)