藤井聡太名人、飛行機見て「リラックス」史上初の空港対局 2時間11分残しのジェット勝利!3連勝で初防衛王手
将棋の藤井聡太名人(21)=竜王、王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖=に豊島将之九段(34)が挑戦している第82期名人戦七番勝負第3局が9日、東京・大田区「羽田空港第1ターミナル」で前日から指し継がれ、先手の藤井が95手で勝利した。2日の叡王戦第3局では敗れ、2連敗でカド番に追い込まれている藤井だが、心乱れず名人戦では白星。シリーズ3連勝で名人初防衛へ王手を掛けた。 午後5時43分。夕焼け空に飛行機が飛ぶ中、藤井が史上初の空港対局を制した。名人は「対局室からも飛行機の離着陸の様子がよく見えて、景色を眺め、リラックスできた」と安堵(あんど)の表情を見せた。午後5時から30分間の夕食休憩が明けてすぐの豊島の投了。第1局、第2局と両者の戦いは終盤の混戦が際立ったが、本局は藤井が持ち時間を2時間11分残しての早い終局となった。 滑走路から空に飛び立つ飛行機の軌道のように、AIが示す形勢グラフは右肩上がりに“藤井曲線”を描いていた。戦型は豊島が雁木(がんぎ)に。藤井は右銀を前線に繰り出し、少年時代から得意としていた「棒銀戦法」で軽快に攻めの姿勢。1日目から先手に形勢が傾いた。「攻めが成功している」と手応えを感じつつ「こちらの玉も薄い形なのでなんとも言えないところ」と翌日に備えた。 2日目、スカイブルーの羽織を早々に脱いだ藤井。攻めの手を緩めず、角のにらみを利かせながら、龍をつくり「ペースをつかめた」と、形勢ははっきりと先手良しに。豊島にとっては辛抱の苦しい時間が続き、夕食休憩前には「こちらの主張が通った」(藤井)と、そのまま勝ちきった。うつむく豊島は「中終盤は、はっきり苦しい感じだった。早い段階で均衡が崩れてしまったので、もうちょっと保っていけるよう指せたら…」と巻き返しを目指す。 藤井は2日に行われた叡王戦第3局で伊藤匠七段(21)に敗れ、自身初の番勝負連敗。叡王戦シリーズは1勝2敗でカド番に追い込まれ「八冠」防衛に黄色信号がともっているが、名人戦では不調論を一蹴(いっしゅう)する快勝を見せた。名人戦第4局は18、19日、大分・別府市「割烹旅館もみや」で指されるが「来週なのでまずはしっかりいい状態で臨めるようにしたいと思います」。名人初防衛へ八冠パイロットの視界は良好だ。(瀬戸 花音)
報知新聞社