実写『幽☆遊☆白書』「霊界死闘編」は描かれないの? 浦飯幽助の“恋のライバル”が登場した名エピソード
Netflixによる実写ドラマシリーズ『幽☆遊☆白書』の配信が、12月14日から始まった。その大まかなプロットは冨樫義博の原作マンガを題材として、「霊界探偵編」や「暗黒武術会編」を上手くアレンジしたような構成となっている。 【写真】Netflix「幽☆遊☆白書」とZOZOTOWNがコラボした限定アイテム欲しい! すなわち原作で最初に展開された「霊界死闘編」については、ほぼ全てカットされている形だ。このエピソードがどんな内容だったか、ご存じだろうか。 「霊界死闘編」とは、原作単行本の1巻、2巻に収録されている第1話「さよなら現世!!」から第17話「黄金色のめざめ」までの範囲を指す。簡単に説明すると、札付きの不良中学生だった浦飯幽助が事故によって命を落とし、その後ふたたび元の肉体に戻るまでのストーリーが描かれている。 現世に復活できるかどうかは、霊界の判断にゆだねられているため、幽助は自身の人間性を証明するためにさまざまな善行を積んでいくことに。愛犬を失ったいじめられっ子の少年に発破をかけたり、この世に未練を残した地縛霊の少女を励ましたり、気難しいおじいさんとタヌキの関係を取り持ったり……といった具合だ。 いずれも1話から2話で完結するショートストーリーで、ハートフルな結末を迎えるものが多い。また、ほとんどが“幽霊”をめぐる話となっているため、ヤンキー漫画にオカルト風味を混ぜた当初の『幽☆遊☆白書』の路線がよく分かるだろう。 他方で第8話、第9話で描かれた「束の間の復活(前・後編)」では、ヒロインの雪村螢子が不良学生に誘拐される事件が勃発。たまたま一時的に肉体を取り戻していた幽助が不良たちを一蹴し、その後駆け付けた桑原和真と会話を交わす展開となった。 2人は喧嘩ばかりしていた間柄だが、幽助が事情を話して協力を求めた際には、桑原が「体に戻ったときにゃ酒でもおごれよ」と返しており、男同士の熱い絆を感じさせる話となっている。 さらに「霊界死闘編」が面白いのは、螢子以外の魅力的なサブヒロイン候補たちが登場していたことだ。 たとえば第10話では、さやかというキャラクターが初登場。およそ30年前に発表された話だが、彼女は現代にも十分通じる魅力を持っている。いわゆる「ヤンデレ」ブームを先取りするような萌え要素の塊だったのだ。 ■実はモテモテだった初期の浦飯幽助 さやかは西洋人形のような見た目をした少女だが、実は屋敷に住んでいる幽霊で、小学生の正太を夜な夜な遊びに連れ出していた。生前は病弱で、家族とも友人とも仲良くできない孤独な人生を送っていたため、さびしさから正太に目を付けたという。 一見大人しそうに見えるものの、幽助が彼女たちの遊びを止めにやってくると、「ジャマするの? あんたなんかきらいよ」と豹変するなど、気が強いところがある。そして大人びた態度の一方で、幽助に「おしりぺんぺん」のお仕置きを受けて泣きじゃくったり、初めての肩車に感動して涙を流したりと、年相応の姿を見せることも多く、ギャップに満ちたキャラクターだった。 そして正太の話が終わっても、さやかは成仏せず、数話のあいだほぼレギュラーのような扱いで幽助たちと行動を共にする。しかも幽助をいたく気に入ったようで、螢子の存在を知ると「あたしとどっちがきれいかしら」と張り合い、嫉妬心を剥き出しに。ぼたんはそんな彼女の様子から、幽助への恋愛感情を見抜いていた。いわば、小さな恋のライバル候補だったのだ。 ちなみに第5話で出会った地縛霊の少女も、幽助に想いを寄せるような姿が描かれていた。幽助は傷心中の彼女を元気付けるため、夜のデートに連れ出し、その笑顔に対して「今の顔スゲーかわいい」という天然の殺し文句まで放っていたので、それも無理はないだろう。実は幽助には、ラブコメ主人公としての適性があったのかもしれない。 こうした話も含めて、「霊界死闘編」は幽助の人間としての魅力がよく伝わってくる内容となっている。初登場のイメージが“札付きの不良”だった分、なおさら効果的なギャップを生み出している印象だ。 実写ドラマ版だけでなく、1990年代に放送されたアニメ版でも、「霊界死闘編」はほとんどカットされている。原作でしか読めない貴重なエピソードなので、機会があれば一読してみることをオススメしたい。
文=キットゥン希美