吉田 羊が挑む“Q1版ハムレット”とは?
『ハムレット』と言えば、シェイクスピアの四大悲劇の一つ。だが、その戯曲に3種類の原本があることはご存じだろうか。 四折版(Quatro)の Q1 、Q2、二折本(Folio)のF1があり、現在では1603年刊行のQ1が、1604~1605 年刊行のQ2の原型ではないかと考えられ、今なお上演が繰り返される演出台本のF1は、Q2を参考に制作されたのではないかと言われている。 この春、PARCO劇場で上演されるのは、現在多く上演されているF1版ではなく、その半分の長さに物語が凝縮されたQ1版だ。 しかも、主演が吉田 羊だというから、驚く人も多いだろう。だが、時間が経つにつれ、この配役が納得のものだと感じられてくるはずだ。 近年の吉田 羊は『ジュリアス・シーザー』『ザ・ウェルキン』といった出演舞台が高い評価を得る一方、NHK大河ドラマや連続ドラマの出演と映像での活躍も目覚ましい。やわらかさ、強さ、激しさ、脆さと多彩な顔を持つ彼女が、ハムレットを演じるのは、しっくりくるのだ。 実際、この『ハムレット』を演出する森 新太郎も、2021年の同劇場の『ジュリアス・シーザー』を回想しながら、こうコメントを寄せている。 「血に塗れ、苦悩しながらも清廉さを失わない孤高の人ブルータスを体現した吉田 羊氏の佇まいが、私の中でいつしかハムレットの孤独と重なり、気づけば今回の上演のためのピースにぴたりとはまっていた」 この『ジュリアス・シーザー』は女性キャストがすべての役を演じるという斬新な演出で話題を呼んだが、今回は男女混合のキャストの中でも、吉田 羊起用の妥当性をしっかりと見せてくれるに違いない。 『ハムレットQ1』の新訳を担当するのは、シェイクスピア劇全 37 作品の翻訳を達成した松岡和子。シェイクスピア戯曲を知り尽くした松岡の新訳にも期待が膨らむ。 舞台PARCO PRODUCE 2024『ハムレットQ1』 作/ウィリアム・シェイクスピア 訳/松岡和子 演出/森 新太郎 出演/吉田 羊 飯豊まりえ 牧島 輝 大鶴佐助 広岡由里子 吉田栄作ほか 企画・製作/株式会社パルコ Text: Reiko Nakamura