カメムシの被害を受けた梨。果汁を吸った部分がへこんでいる（島根県農業技術センター提供）

　暖冬の影響で大量発生したカメムシが、秋の味覚・梨の品質に悪影響を与えている。島根県内の農家では６割が被害を受けているケースも出ている。最高級品が少なく、進物用が不足しているため、注文の締め切りを早めたスーパーマーケットもある。 【カメムシ被害】島根新米価格　前年比１．５倍　カメムシ被害拡大　高値に追い打ちか

　島根県は７月、２年ぶりに果樹カメムシの注意報を発令した。県農業技術センター（出雲市芦渡町）によると、４～８月の発生数は例年の６・８倍。暖冬の影響で越冬したのに加え、今年生まれた個体が加わって大量発生したという。 　島根県一の梨産地である安来市で約４０年栽培する板持浩二さん（６１）は「過去に例がないほどひどい。育てている６割くらいが被害を受けた印象だ」と話す。例年より消毒の回数を増やしたものの、防げなかったという。 　果実にかけた袋の上からでも果汁を吸うため、被害予防が難しい。果汁を吸われるとくぼんだような跡が残り、進物用にはならないという。 　このため、山陰両県のスーパーマーケットでは、進物用の注文受け付けを終了する店舗が出ている。 　鳥取県中部から島根県東部にかけてスーパーを展開する丸合（米子市東福原２丁目）では、例年９月上旬まで受け付けるのを今年は８月１５日で終えた。 　商品部青果グループの松本順一さん（５１）は「被害状況が見通せない中、商品を確実に確保して発送するため、締め切りを早めざるを得なかった」と話した。

　山陰両県と岡山県内に店舗を置くマルイ（岡山県津山市）も８月１３日で締め切ったという。 　ただ被害を受けても味が落ちるわけではないといい、ＪＡしまねやすぎ地区本部やすぎ梨生産部会の岩田繁樹部会長は「今年は日照時間が多いため、糖度が高くおいしくできあがった」と太鼓判を押す。 　今後、リンゴや柿の被害も懸念されるが、同センターの調査では個体数は減少傾向にあり、病虫科の沢村信生科長は「被害は収まるのではないか」との見通しを示した。