パット復調の兆しはあるか 松山英樹の”トレリウム”新パターとセットアップの秘密
銅合金のインサートを搭載する「トレリウム T22 ニューポート2」のプロトタイプは、サンドブラスト加工を施したスペシャルバージョン。構えてみても、わいてこない違和感。さらに松山は、このドットモデルが自分の“悪いクセ”の解消にも一役買ってくれそうだと踏んでいる。 「僕、『アドレスが長い』ってよく言われるじゃないですか。それってたぶん、構えたときに自分の気持ち悪さを取ろうとしているからなんです。線だと“真っすぐ”に合わせながら余計に『取ろう、取ろう』とし過ぎてしまうけれど、ドットだと『ある程度でいいや』というか、細かいことを気にしなくなるのでイイかなと」 松山にとって突然の“食わず嫌い”解消は、「打ち方も最近は変わっているから」という理由もあると考えている。以前よりも手元の位置が高くなり、バックスイングからフォローまでを振り子のような動きに近づけた。
また、パターそのものの変更を検討していた頃から松山はアドレスの順番も改良した。まずターゲットに対してパターのフェースを合わせてから、身体の向きを整える。以前はそれが“逆”、身体の構えセットしてから、パターのフェースの向きを合わせていた(ちなみに黒宮コーチに言わせると、松山はターゲットに対して真っすぐ立つ能力が極めて高いという)。 「高校生くらいからそのルーティンでやってきた。ボールと身体との距離をあまり変えたくないと思っていたので。身体を全部決めちゃってから、ヘッドを出して、打つみたいな。フェースを決めてから構えるのは、腕や手の感覚が気持ち悪くてイヤだったんですよね。『じゃあ先に身体から決めてしまえばいい』って」 実は2021年の「東京五輪」では同じセットアップ方法を試していた。黒宮コーチのアドバイスから、期せずして再びオリンピックイヤーに構えの順序をスイッチしたことになる。
改善の兆しはあるのか。今季のストローク・ゲインド・パッティングはPGAツアー全体117位の「-0.142」だが、新しいスタイルを取り入れたこの3試合は「メモリアルトーナメント」で全体25位の「+1.186」、「全米オープン」は24位で「+0.75」、「トラベラーズ選手権」は35位で「+0.272」とすべてフィールド平均上位の数字を記録した。 「まあ、僕もいろいろ考えてるんですよ(笑)」。トライ&エラーに終わりはない。(編集部・桂川洋一)