個性的な水冷Vツイン搭載で乗り味は抜群だった 1982年ヤマハ「XZ400/XZ400D」【柏 秀樹の昭和~平成 カタログ蔵出しコラム Vol.7】
振動が少なくコントローラブルなエンジンが秀逸
感動のひとつめ。それは水冷VツインDHOC4バルブエンジンはパワフルでありながら極めて滑らか。スロットルのオンオフで発生するバックラッシュが非常に少ない作りになっていて乗りやすかったのです。 アクセル操作の開け閉めによるギクシャクを俗に「ドンツキ」と言いますが、ドンツキが大きいとクルマよりホイールベースが短くて重心が高くて前後方向の揺れ(ピッチングモーション)が大きなバイクはカーブで思った走行ラインが描けなくなりがち。直線はもとよりカーブでも、このギクシャクが少ないほどライダーは快適かつ楽しくなります。 同社・同排気量の人気4気筒モデルXJシリーズに勝るとも劣らないハイレスポンスと加速力を示します。2気筒ながら扱いやすさでも同等以上だったのです。 感動のふたつめ。Vツインならではのスリムなライディングポジションを可能とするエンジンはシリンダー交角70度ゆえに前後方向にコンパクト化できる反面、交角90度のエンジンよりも振動が発生しやすいためヤマハは1軸3ウエイトバランサーを内蔵しています。この滑らかな程よいツインらしい鼓動と見事に混じり合っているのです。 燃焼に関してはスワール(渦巻き)を発生させてシリンダー内への充填効率を上げる方式Y.I.C.S.(ヤマハ・インダクション・コントロール・システム)を採用。これは他社を含めてこの頃に多くのバイクに採用され始めた手法です。4バルブ式エンジンが6000回転前後まで2バルブ作動という現在の国内外の可変バルブ式エンジンのバイクもスワール効果を狙ったメカです。 後輪への駆動方式はチェーンではなく、ヤマハ400ccクラス初のシャフト駆動でした。チェーン駆動よりも静粛性に富み、汚れもなく、チェーン調整も不要になるためロングランになるほどメリットを感じる方式です。 フロントサスは当時の流行だったセミエア式。前輪軸はフォーク下部後方にオフセット:トレーリングアクスルタイプというレアな選択。リヤはカンチレバー式:モノクロスサスペンション。いわゆるリンクなしの1本サスです。 当時の同排気量400ccモデルの大半はツインショック式でしたが、XZ400は直線高速走行はもとより、ワインディング走行での路面追従性の良さとふらつきのない安心の走りが実感できました。
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