キズ単独公演『焔』閉幕、会場は熱狂の渦に!大成功を納めた初の日本武道館公演をレポート
今、ヴィジュアル系というジャンルを本気で未来へとつなげようと切磋琢磨しているバンドがいる。それが「VISUAL ROCK」なる肩書きを自ら掲げ、活動しているキズというバンドである。そのキズが、ついに2025年1月6日、単独公演『焔』を日本武道館で開催した。バンドとして、ワンマンで武道館公演を行うのは今回が初。 【全ての写真】キズ初の日本武道館公演(全19枚) キズは、2017年に活動をスタートさせた4人編成のロックバンド。オリジナルアルバムを出さず、ツアーファイナルを詠わない活動スタイルは異例で、白塗りの奇抜なヴィジュアルやグロいミュージックビデオはどこからどう見ても棘がある。だが、ライブでは痛みや傷、絶望を描きながらも、それとは裏腹に生きるための力を与えてくれる来夢(vo/g)の歌、激しいアクションで魅了するreiki(g)、イケメン担当のユエ(b)、派手な衣装やヘアメイクがインパクト大のきょうのすけ(ds)の3人が繰り出すハイレベルのパフォーマンスで、これまで単独公演をことごとくソールドアウトさせてきた彼ら。過去、どしゃぶりの雨に見舞われた日比谷野外大音楽堂、NHKホールに続いて、バンドにとって過去最大級の会場となるこの日の日本武道館も、開場時間が近づくと曇っていた空から雨粒がぽつり、ぽつり。雨足がどんどん強くなり、東京がじつに40日ぶりに本格的な雨に襲われた中、キズ初の武道館公演は開幕した。 いろんなものを燃やして、この時代に、シーンに、そうして誰かの心に火をつけるーー。公演タイトル『焔』が示していた通り、武道館には迫力満点の炎が何度も舞台から燃え上がり、LEDパネルの中では東京の街まで炎上。ステージ上では、張り詰めた緊張感の中、2時間ぶっ続けで、MCもほぼ無い状態のまま、「武道館」を1度も言葉にすることもなく、各々が生き様をひたすら歌と音で叩きつけ、集まったオーディエンスの心臓、今の音楽シーンに火をつけていった。そうして燃え上がったあとに残ったもの。それは「生きろ!」というたったひとつの生命力溢れる強いメッセージだった。 開演時間を少し過ぎたところで場内が暗転。来夢のお立ち台、マイクスタンドだけが鮮やかなライムグリーンに発光する中、過去のライブやMVを散りばめたオープニング映像に続いてメンバーが登場。ライブは「ストロベリー・ブルー」でスタート。“さあ、こっちへ さあ、こっちへ”と、あの場所である武道館へとまずはオーディエンスをナビゲート。武道館という会場でもいつもと変わらないメンバーたちは、すぐさま「傷痕」をドロップ。すると会場では迫力あるヘドバンが辺り一面で巻き起こり、たちまちそこにはキズの楽園が誕生。舞台後方を覆い尽くしていた巨大なLEDパネルが、観客に負けないほど頭を激しく振り回しているメンバー4人を映し出す。 続けて「人間失格」が始まると、壮大なクラップが武道館一面に広がっていく。それでも、さらなる盛り上がりを即すように、来夢が「俺の声、聞こえてんのか?」と客席を一撃したあと、曲はメロディアスなリフが効いたキラーチューン「蛙-Kawazu-」へ。攻撃的なヘヴィさとは反して、客席は一丸となってかわいい振り付けを踊りだすこの曲。“か・わ・ず”のキメから疾走が始まると、来夢が“僕のせいなんだ~”と感情をむき出しにして歌い、観客の胸をナイフで抉っていく。そうして、その痛みを最後の1フレーズで救いを与えるよう歌唱する歌の表現力は圧巻のひと言。その来夢がアコギを持ち、「銃声」が始まると、ここからは、キズのよりディープな世界へと突入。画面には縦書きになったリリックビデオが映し出される。今も戦争、傷つけ合い続ける世界情勢を表すように、画面には激しい稲妻が走り、それをバックに“LA LA LA~”と歌う観客たちの声が鎮魂歌のように場内に響き渡る。