広島土砂災害の日に生まれた少女 ノートにまとめた「防災」 広島市安佐南区
広島土砂災害が起きた2014年8月20日、広島市安佐南区八木4丁目の被災地で産気づいた母から生まれた戸坂小4年有田紗代さん(9)=東区=が、災害の注意点や防災への思いを「さいがいノート」にまとめた。6月に市豪雨災害伝承館(安佐南区)を初めて訪れたのがきっかけ。「いろんな人に見てもらい、災害の恐ろしさや備えの大切さを伝えたい」と誓う。 【写真】さいがいノートで、広島土砂災害について調べたページ 土砂災害が発生するメカニズム、必要な備蓄品や防災グッズ…。B5判のノート60ページは災害に関する文章と絵でいっぱいだ。「災害は恐れることも大切。危険だと思ったらすぐ避難」との心構えも記した。同館の展示や職員の説明だけでなく、帰宅後に調べた内容を加えて7月末に完成した。 紗代さんの母志穂さん(49)はあの日、八木の実家に帰省していた。午前1時ごろ雨音で目覚め、すぐに陣痛が来た。外は稲光が絶え間ない。「病院に行ける状況ではない」と、おなかをさすって耐えた。夜が明けて母親の運転で中区の病院へ向かい、紗代さんが生まれた。 紗代さんが広島土砂災害を知ったのは、3年前の小学1年の夏。大雨が降った日だ。外の様子を見て「すごい雨だね」と漏らすと、志穂さんが「紗代が生まれた時はもっとひどかったよ」と口を開いた。その日に多くの人が亡くなったと聞き、「土は軟らかいのに、土石流はそんなに危ないんだ」と驚いた。 少し成長し、さいがいノートをまとめた紗代さん。「自分は多くの人が命を失い、傷ついた日に誕生した」と改めて受け止める。だから最後のページに力を込めてつづった。「みんなが、命を大切にしてほしい」。心から願っている。
中国新聞社