法が想定していない「候補者の言動」つばさの党による選挙妨害行為に思う
政治団体・つばさの党による選挙妨害行為は、ついに警察による家宅捜索という事態に至った。「立候補者による行為」が問題になることは異例だ。だが近年は、選挙を通じてヘイトスピーチを振りまくことへの懸念も起きている。立候補者による想定外の言動をどう考えるか、RKB神戸金史解説委員長が解説した。 ■激しい他候補への攻撃 今日の朝刊を見ますと、政治団体・つばさの党に、公職選挙違反容疑で家宅捜索に入ったニュースがすごく大きく取り上げられています。映像を見ると、とんでもないです。もう「取り締まったらいいじゃないか」と普通考えますよね。とは言え、いろいろ複雑な問題がここにはあります。 選挙での発言の自由は非常に重要で、今日の読売新聞でも「選挙活動や表現の自由に配慮しつつ、現行法の運用で積極的な取り締まりを行うか、法改正にまで踏み込むかが焦点になりそうだ」と解説しています。朝日新聞には「自由妨害罪の表現はあいまいな面があるが、乱用されているわけではない。選挙活動に関する規制はできる限り抑制的であるべきで、警察の介入を容易にする法改正は必要ない」という識者の話も出ています。 ■候補によるヘイトスピーチも想定されていなかった このニュースを見ながら私は、2019年の地方統一地方選挙を思い出していました。ヘイトスピーチを繰り広げている団体が、選挙に立候補したんです。これに対して、「ヘイトスピーチをやめさせなければ」と考える人たちが事前に勉強会を開いたので、見に行ったのです。どこまでが選挙違反と見なされ、公職選挙法の自由妨害罪と捉えられてしまうか。どのくらいの音量だったらどうなるのか。どれぐらい続けたらどうなるか。いろんなことを、判例を基に勉強している様子を見ました。正直言いますと、その方々たちはヘイトスピーチの蔓延を防ぐために、いざとなったら「逮捕されても仕方がない」という覚悟を決めていました。非常に悲痛な表情で。もちろん、誰も逮捕なんかされたくないです。されたくないけれど、ヘイトスピーチが選挙を通じて拡散されていくこと、それが子供たちやお年寄りの耳に届いてしまうことを「何としても防がなければいけない」という顔をしていたのです(注:結果的に、逮捕者は出ていない)。