「活躍するのは今じゃなくていい」サッカーに全力で取り組む4人の息子たちへ、元日本代表ストライカーが熱きエール
大久保嘉人コラム「一路邁進」❽
春は旅立ちの季節ですね。高校を卒業した長男が先日、プロサッカー選手を目指してスペインに向かいました。現地では語学学校に通いながら、所属クラブを探すようです。欧州では5部、6部のカテゴリーまであります。いろいろ悩んだ末に決めた挑戦ですが、できるかどうかはやってみないと分かりません。ただ、貴重な経験になることは間違いないでしょう。 ■【写真】大久保嘉人さん一家(本人提供) わが家には息子が4人いて、全員がサッカーをしています。長男は小学生の頃、やめたいと言い出した時期がありました。自分に直接伝えてくることはなかったけど「大久保嘉人の息子」という周囲の視線が精神的につらかった部分もあったのかな…。でも、それも運命。今回のスペインに行くという決断も、事前に相談するというよりは自分で決めたことでした。
体の大きな相手にはじき飛ばされても
中学生の次男と三男は「父親を超えてやる」と思っていて、考え方も自分に似ています。長男はFWやサイドの攻撃的なポジションをこなし、次男は技術があってパスが得意な中盤の選手。三男は、現役時代の自分と同じでゴールにこだわるスタイルのFWです。 次男と三男は「プロになりたい」という目標がはっきりしています。最近は、どうすれば夢がかなうかということを質問してくるようになりました。だから、中学時代の自分の経験を伝えています。試合に出られない悔しさをこぼしたりするので、常に伝えているのは「活躍するのは今じゃなくていい」ということです。 僕は中学2年の頃、身長が低いこともあって試合に出られませんでした。仲間の活躍を見ながら悔しかった。体の大きな相手に何度もはじき飛ばされる中で、どうすれば負けないかを考え自主練習に取り組むようになりました。「いつか見とけよ」という気持ちとともに。長崎・国見高の2年生になり、ようやく努力が報われて結果が出るようになりました。そこからプロへの道が開けました。
「今遊んで、プロになれなくて後悔しても遅いよ」
息子たちは携帯電話のゲームに夢中になって、自主練習に行かないことがあります。そういう時は「今遊んで、プロになれなくて後悔しても遅いよ」と伝えます。僕が子どもの頃、自宅のトイレの壁には「何かを犠牲にしなければ一流になれない」という〝格言〟が張ってありました。元ブラジル代表で日本代表監督も務めたジーコさんの言葉で、両親が見つけたみたいです。当時は「何だよ、それ」と思っていましたけど、今は意味がよく分かります。 サッカーを始めたばかりの四男を含め、彼らがこれからの人生でどんな道を選ぶかは分かりません。もちろん、サッカー選手になることが全てではないです。それぞれ違う個性を持った子どもたちの挑戦が本当に楽しみです。 (元サッカー日本代表)
西日本新聞社