【霞む最終処分】(38)第6部 リーダーシップ 識者 国民との対話が重要 民意に沿った動機づけを
除染土壌の再生利用により、最終処分に向けた土壌の分別・焼却・処理などで発生するCO2の量を抑えられる。佐藤は再生利用を受け入れた自治体に、削減できたCO2に相当する排出権を与える仕組みを提案。「実現すれば、CO2を削減できない自治体は除染土壌を受け入れることで環境問題に貢献できる」と利点を示す。 ◇ ◇ 環境省による再生利用の実証事業では、放射性物質の濃度が比較的低い除染土壌を芝生の造成などに使う。現地の空間放射線量、大気や浸透水に含まれる放射性物質濃度を測り、科学的な安全性を確かめる。 佐藤は「除染土壌の安全性を示すために実証事業は欠かせない」と事業の意義を念押しし、都道府県や市区町村の長が担うべき役割の大きさを強調する。「住民が描く地域の未来図を自治体も共有すべきだ。首長には住民の声を集約し、国に伝えるリーダーシップを発揮してほしい」と訴えた。(敬称略) =第6部「リーダーシップ」は終わります=
さとう・つとむ 新潟県糸魚川市出身。早稲田大大学院理工学研究科博士課程修了。日本原子力研究所研究員、金沢大理学部助教授などを歴任し、2011(平成23)年4月から現職。除染土壌の再生利用と最終処分に向けた環境省の「地域の社会的受容性の確保方策等検討ワーキンググループ」座長を務める。専門は環境鉱物学。59歳。