【ロサンゼルス山火事ルポ】「もはや戦場だ…」現地在住ジャーナリストがつづる、過去最大の恐怖と一縷の望み
ロサンゼルス近郊で起きている前代未聞の大火災。「これは単なる山火事ではない」と住民は茫然と火の手を見つめる。現地はいったいどのような状況になっているのか。この災害から学ぶべき教訓とは。LA在住のジャーナリストが見た一部始終をお伝えする。(取材・文/ジャーナリスト 長野美穂) 【この記事の画像を見る】 ● LAに戻ると、そこは闇の世界 「友達の家がさっき全焼したんだ」 1月7日(米国西海岸時間)の午後9時過ぎ。筆者が他州への出張からレンタカーでカリフォルニア州ロサンゼルス市(以下、LA)に戻ると、LA空港近くのレンタカー事務所の中は、電気がついておらず、真っ暗だった。 暗がりの中、従業員たちは懐中電灯を手にカウンターに立ってお客の相手をし、お客は真っ暗なトイレをスマホの灯りを頼りに使っていた。「山火事の影響らしくて、突然の停電なんだ」とスタッフが話しながら発電機を運び込んでいた。 その時点では、筆者はまだ「この季節にはよくあるマリブ地区の山火事かな」ぐらいの認識だった。市バスに乗ると、普段はネオンの灯りで明るいはずのLAの街が薄暗い。信号の電気もところどころ消えていた。 バス停で降りて、配車サービスのウーバーを呼ぶと、ドライバーが「パリセーズの街が、とんでもないことになってる!」と興奮して叫んだ。彼が見せてくれたスマホのビデオには、プール付きの邸宅が巨大な炎に包まれて燃えている様子が写っていた。 「これ、友達の家。さっき全焼した。君を送り届けたら、友人たちが避難するのを助けるために、真っ直ぐパリセーズに向かうつもりだ」と言う。 パリセーズとは、俳優のトム・ハンクスなどの有名人たちの邸宅があることで知られたLA市内の超高級住宅地、パシフィック・パリセーズのことだ。海を望む高台に数億円以上の巨大な邸宅がずらっと並ぶ地域だ。ドライバーの彼は、パリセーズに隣接するサンタモニカ市で生まれ育ったという。