定年後は「同じ業種」での起業を計画!すると会社から「退職金を出さない」と言われました…
企業秘密やノウハウが流出することを防ぐために、同業種への転職や起業を禁止しようとする会社もあるようです。 しかし、それだけを理由に、定年後に同じ業種での起業を計画している社員に対して「退職金を出さない」とすることは認められるのでしょうか。 本記事では、競業禁止が有効となるケースについて、詳しくご紹介します。 ▼年金が「月10万円」で老後が不安…持ち家で「貯金」と「退職金」があれば大丈夫? 生活費を試算
競業避止義務とは?
日本国憲法第22条では「職業選択の自由」について定められているため、基本的には定年後に同じ業種で起業することや、同業他社への転職は可能です。 しかし、就業規則などで競業を禁止する旨の規定がある場合は、違反した場合になんらかのペナルティーが課されるおそれがあります。 厚生労働省によると、競業避止義務とは、使用者の利益に著しく反する競業行為を差し控える義務のことをいいます。 さらに、競業避止義務に違反した場合は「就業規則に基づき、懲戒処分や損害賠償請求をなし得る」とされています。
まずは現在勤めている会社の就業規則を確認しよう
退職後の競業を禁止する規定があるかどうかは、会社の就業規則で確認しましょう。 ただし、あらかじめ就業規則に競業禁止の特約があっても、その内容が合理的なものでなければ、有効とされない可能性があります。 内容の合理性を判断するポイントには、次のようなものがあります。 ●競業禁止の特約について労働者が合意しており、勤務継続の前提とされていた ●労働が営業秘密に直接かかわっていたなど、競業を禁止することによる会社側の正当な利益が存在している ●競業禁止の期間や地域・職種などの範囲が相当な限度を超えていない ●競業禁止によって労働者が受ける不利益に対して、金銭の支払いなどの代償措置がとられている
退職金の全額不支給が認められるのは、重大な背信行為があった場合に限られる
競業禁止の特約があり、労働者がそれに違反した場合に、会社側が「退職金を払わない」とすることは認められるのでしょうか。 過去の退職金全額不支給が認められなかった裁判例では、就業規則に定めはあったものの「全額不支給は元労働者の職業選択の自由に重大な制限を加える極めて厳しいもの」ということが理由として挙げられたようです。 退職金の全額不支給が認められる場合としては、単に競業禁止に違反したというだけではなく「労働者に重大な背信行為があった場合に限られる」とされました。