遊牧民の子供たちは故郷にいない……学校は廃校、子供たちはやむなく都市へ
日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。その北に面し、同じモンゴル民族でつくるモンゴル国が独立国家であるのに対し、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれ、近年目覚しい経済発展を遂げています。しかし、その一方で、遊牧民としての生活や独自の文化、風土が失われてきているといいます。 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録しようとシャッターを切り続けています。内モンゴルはどんなところで、どんな変化が起こっているのか。 アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。
子供たちの遊びは大きく変わった。携帯電話のゲームによって、外で遊ぶ子供は確実に減った。 また、一人っ子が多いので、同じ年ごろの遊び相手が近くにいないことも多い。特に、地方の学校はほとんど廃校になり、ホショーの中心地に移転されたので、学校の休みのとき以外は、故郷の田舎に子供がいない。幼稚園や入学前の子供が、一人ぼっちでさびしく遊んでいるところを何回も見かけた。そのとき、私たちの時代は物資的に貧しかったが、一緒に遊ぶ仲間がいて楽しかった、といつも思った。 一人っ子政策は、子供が孤独だったり、思いやりの心が育たなかったり、自立することができなくなったり、などといろいろ問題が指摘されている。(つづく) ※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第10回」の一部を抜粋しました。
---------- アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA) 1977年 内モンゴル生まれ 2001年 来日 2013年 日本写真芸術専門学校卒業 国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。 主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。