前田敦子、性被害のトラウマを抱える役は「難しかった」三島有紀子監督の前で吐露【インタビュー映像あり】
公開中の映画『一月の声に歓びを刻め』で主演を務めた俳優の前田敦子と監督の三島有紀子が一緒にインタビューに応じた映像が到着した。本作で、6歳の時に性暴力を受けた経験を持つ主人公の一人、れいこを演じた前田が、「難しかったです…」と目を潤ませながら当時の心境を打ち明けている。 【動画】前田敦子&三島有紀子監督、インタビュー映像 『繕い裁つ人』『幼な子われらに生まれ』『Red』などの作品を手掛けてきた三島監督の長編10作目となる本作は、監督自身が47年間向き合い続けた「ある事件」をモチーフに自主映画からスタートしたオリジナル企画。八丈島の雄大な海と大地、大阪・堂島のエネルギッシュな街と人々、北海道・洞爺湖の幻想的な雪の世界を背景に、3つの罪と方舟をテーマに、人間たちの“生”を美しい映像とともに描いていく。 インタビュー映像で、前田はオファーを受けてからの心境を「まっすぐに一緒にやりませんかと言ってくださいました。でもすぐに『はい』と言える役じゃないなと思って。かみ砕く作業を自分の中でやりつつ、(一方で)監督は『待ってます』と変わらずにいてくださったので、飛びついたら監督がスッと連れていってくれるかなという期待も込めて、やっとお受けできました」と苦笑い交じりに語っている。 前田が演じたれいこは、6歳の時の性被害のトラウマを抱え、元恋人とは肉体関係を結べずじまい。その元恋人が亡くなり、葬儀に出席した後、彼女は「レンタル彼氏」を仕事にしている男に声をかけられ、一夜をともにする。 「脚本の中に監督の伝えたい気持ちがすごく詰まっていたので、でもせりふで語らないシーンが全体的に多くて。撮影現場に行った時に感じられる余白がたくさんあるだろうな」と脚本を読んでいる時から思っていたという前田だが、現場では「監督が隣りに、目の前にいてくれたので、今回の役は(俳優の)みんなそれぞれすごく助かったと思います。寄り添ってくれる存在がなかったらつらかった」と感謝の気持ちを語ると、三島監督は「(今までも俳優たちに)『近い!近い!』といつも(嫌がるように)言われる。それくらい(撮影の時は)近くで見ているので(笑)」と告白して笑いを誘った。 三島監督自身が6歳の時に性被害にあった実際の現場でも撮影が行われた。そのシーンについて前田は「お芝居だけど、お芝居のようにせりふを言いたくないなという難しい駆け引きがあったかもしれないです。監督だけを意識していました。一緒に(監督と)しゃべっているみたいになれたらいいなと思って。ほかは見ないようにしていました」と語ると、その撮影現場を思い出したかのように深いため息まじりに「難しかったです…」と目を潤ませながら当時の心境を打ち明ける。 凍てつく北海道・洞爺湖や、雄大な海と大地に吹き荒ぶ強風の八丈島、エネルギッシュな大阪・堂島で撮り上げた本作。完成した本編を観た前田は「冒頭からふわっと広い世界に入っていく感じが気持ちいいなと思って。(主人公たちが)罪の意識を抱えていても、どんどん積み重なって重たくなっていくわけではなくて、みんなが少しずつ何かを解放していくのを(自分も)一緒に見ながら、『最後に自分がこういう風に思えるということはこうなんだ』と自分自身を整理できる、“人生の映画”だなと思いました」と語ると、三島監督は「ふつうは遠く離れた声は聞こえない。だけどどこかの誰かにこの声が届いているのかもしれないと信じて3ヶ所で撮影した思いがありました」と創作の原点の一つ明かした。 これを受けて「何かを植えつけてくるわけでもなくて、こうであるべきだでもなくて、余白をいっぱい作ってくれる心地いい、気持ちいい映画です」と前田が締めくくると、監督も納得の笑顔を見せていた。