《動作解析の専門家が徹底解説》カブス・今永昇太 直球のキレ生む「回転スピン投法」
無双のピッチングが続いている。 今季からカブスでプレーする今永昇太(30)だ。メジャー3試合で15回1/3を投げて防御率0.00(成績は4月16日現在)。デビューからいずれも4回以上を投げ自責点0は、防御率が公式記録となった1913年以降で5人目の快挙だ。今季絶好調の大谷翔平からも、空振り三振を奪っている。 【連続写真】動作解析の専門家が徹底解説…!今永昇太の「回転スピン投法」 動作解析の専門家で筑波大学・体育専門学群教授の川村卓(たかし)氏はこう分析する。 「小柄な日本人投手の理想的なフォームでしょう。大柄な米国人投手は長身の高低差を活(い)かして上から投げ下ろすのが主流ですが、身長178㎝の今永は身体の横回転を利用しボールが手から離れる時には上からスピンをかけている。日本にいた時よりややサイド気味の投法で、より腕の遠心力を活用できています。150㎞/hほどの直球に浮き上がるようなキレが加わり、空振りが取れるんです」 左腕・今永の投球を連続写真で見ながら、川村氏の解説を聞こう。 「①では左脚にしっかり体重が乗って、右ヒザはお腹のあたりまで上がっています。股関節を鍛えているからでしょう。ここまで安定した始動ができる投手は、メジャーでもなかなかいません」 圧巻は②から③にかけてだ。 「身体を沈み込ませ、体重を左脚から右脚へスムーズに移動させています。驚くのが、両肩のラインがずっと地面と平行でブレないこと。普通は右肩が前方へ突っ込んでしまいますが、始動が安定しているからこそのピッチングフォームでしょう。③では身体が二塁側へ残っているため、ボールを持つ左手が背中の方向にある。打者からすると、なかなかボールが見えないので打ちづらいと思います」 ④では、身体の横のひねりがボールに力強さを加えている。 「腰を大きく回転させることで、身体全体に勢いが出ています。右脚をしっかり打者方向へ踏み出し、スピンの利(き)いたボールを投げ込んでいる。米国では珍しいタイプの投げ方で、メジャーの強打者も高めに浮き上がるボールに手こずり空振りしています。強いて似た投手をあげればアストロズの守護神で、驚異の奪三振率(9イニングあたり約15)を誇るサイドスローのヘイダーでしょうか」 フィニッシュの⑤では課題がみえる。 「身体が逆『く』の字に曲がり、お尻が二塁側へ残ってしまっています。スムーズな動きとはいえず、肩やヒジに負担がかかる良くない形です。今永は日本にいた時から故障がちで、年間通じて活躍できたシーズンが少ない。身体への負担が少ないフォームへの修正が、今後の課題でしょう。逆にケガさえなければ、間違いなくメジャーで活躍できます。年間15勝はできるでしょう」 2勝目をあげたマリナーズ戦後、今季初の四球を与えたことを悔やみ「勝って反省できるのは感謝すべきこと」と語った今永。常に思考する「投げる哲学者」が考えついた「回転スピン投法」で、メジャーの強打者を翻弄(ほんろう)する。 『FRIDAY』2024年5月3日号より
FRIDAYデジタル