台湾の完璧な感染対策は「コレ」から始まった!…オードリー・タンが語る変革を起こすために必要な「大前提」とは?
コロナ禍において国民全員にマスクを配布するシステムをわずか3日で構築し、世界のグローバル思想家100人にも選出された若き天才オードリー・タン。自身もトランスジェンダーであるタン氏が、日本の若者に向けて格差やジェンダー、労働の問題からの「解放」をわかりやすく語る『自由への手紙』(オードリー・タン著)より抜粋してお届けする。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『自由への手紙』連載第23回 『「私は保守的無政府主義者」…矛盾した言葉に隠された「混沌の時代」を生き抜くためのカギとは』より続く
安全な居場所から思いやりは生まれる
変革を起こすためには、居場所が必要です。 自分がいる環境に守られていること。安全だと感じる場所をもつこと。これが何よりも大切なことです。 もしも自分に居場所がなかったら? もしも自分の安全が担保されていなかったら? 人は他者を受け入れようとしなくなる。これはごく単純な人間の性です。 もしも私の家にカウチがなかったら、「カウチサーフィン」と呼ばれる民泊コミュニティを歓迎することもないでしょう。 至極、当たり前のことです。
「居場所づくり」から始まったコロナ対策
新型コロナウイルス対策を講じる際も、「安全な居場所」という舞台づくりからはじめました。 医療用マスクの輸出を始めたのは2020年6月のことですが、その後、1日当たり200万枚だった生産量を1日当たり2000万枚にまで引き上げました。 必要十分なマスク生産量が確保できたところで使用制限を撤廃し、世界中の人道支援団体にマスクの寄付まで行うようになりました。 これは「台湾には十分なマスクがある」と人々が思えたから、実現したことです。自分の居場所で安全が担保されたから、他者を受け入れ、思いやることができました。 しかし、マスク増産態勢が整うまでの2~3ヵ月間、状況は異なりました。 「十分なマスクがありません」 「必要な資源がありません」 「申し訳ありませんが、ほかを当たってください」 そう伝えて、私たちはマスクの使用制限をし、人々はそれに従った。これはごく当然のことだと思います。 翻って考えれば、自分の居場所があるかぎり恐れることはないということ。 私が目指すのは、「強制から解放されたアナキズム」。 居場所さえあれば、どんな変革も、強制や排除なしに起こせるはずです。 『「権威者がいない空間」…台湾の敏腕デジタル担当大臣が語った、インターネットが繁栄した納得の理由』へ続く
語り)オードリー・タン