ドラマ『しょせん他人事ですから』が描いた誹謗中傷の“身も蓋もない真実”と勝者なき哀しい結末
お金を払えば許される加害者?
彩子が必死に誹謗中傷した理由を聞き出そうとする様子が印象的だった。だからこそ、その答えが「ノリ」「バカ」だったことを知って落胆する姿は不憫でならなかった。終わってみれば彩子側の要望はおおむね通り、「彩子の勝利」という見方もできる。しかし、彩子は心療内科に通わなければいけないほどの傷を負っており、決して救われた終わり方ではない。一方、和解条項を詰めた結果、優希側は損害賠償金として120万円を払うことになった。決して安い額ではないが、それでもお金を払ってしまえば優希は許されてしまう。むしろ「優希の勝利」という考えも浮かび、いかにネット上の誹謗中傷の落としどころが難しいのかが伺えた。 加えて、「ノリ」「バカ」のために誹謗中傷する人は少なくないことから、いかに誹謗中傷を抑制することが容易ではないのかも感じざるを得ない。何か明確な理由があれば、対策ができ、なにより被害者も多少なりとも納得できる。しかし、実際は情状酌量の余地がある理由はなく、基本的には「身も蓋も無いんですけど、何も考えてないんです」なのだろう。 本作を通して、ネット上の誹謗中傷対策が一筋縄ではいかないことに気付いたからこそ、今後彩子のように不幸になる人、優希のように軽率に人を傷つけてしまう人を無くすための議論が活発になってほしいと思う。
望月 悠木