中日根尾がブルペン目慣らしで禁断スイングしちゃった?!
今クール最後にも全体練習に合流
一方の根尾は、日ハム、中日でプロ通算108ホールドを誇る右腕のボールをどう感じたのか。 「生きたボールを初めて見させていただきました。今まで見たことのないボールのキレ、軌道のボールでした。低めにも集まり、いいものを見させてもらいました。勉強になることがたくさんあった。距離感だったり、1球1球を目に焼き付けるつもりでした」 上背はないが、谷元の特徴は、両リーグ通じて屈指の回転数の多いボールのキレと制球力。この日は、その小気味のいいストレートだけでなく、カット、フォーク、チェンジアップという変化球も見せてくれた。根尾にとって絶好のプロシミュレーションとなった。 第2クールの初日となったこの日は、練習メニューが、一段階ステップアップしていた。数本のダッシュが加わり、個別練習では特守もあった。短い距離で3人が三角形を作り、できるだけ素早く正確にボールを回す練習途中に、あいにくのゲリラ豪雨。急遽、サブグラウンドから室内に練習場所が移動したため、その後のメニューはわからなかったが、たっぷりと1時間、立石充男巡回野手コーチの手ほどきを受けた。 「(前日の練習休養日で)体を休めたおかげで、いい形で練習に入れました。ひとつひとつステップを踏んでいくという考えでやりました」 それでもいい調整ができている手ごたえがあるのか?と聞かれ「ありません」と答えた。 それが、正直な気持ちであり、今いるもどかしい立場への戒めの言葉だったのだろう。別メニュー組を卒業できたときでなければ手ごたえなど出てはこない。だから、根尾は、「怪我する以前より強い体を作ってからプレーできるようにやっていきたい」と続けた。 2軍の関係者によると、12日まである今クールで1日ずつメニューを増やしていき、負荷をかけても痛めた右ふくらはぎの回復に異常が見られないようであれば、今クールの終わりにも、リハビリ別メニュー組を卒業。全体練習に合流する予定だという 問題は、ダッシュ系と細かな敏捷系の負荷に耐えられるか、どうか。そこがクリアされベースランニングが可能になれば、通常メニューを消化することに障害はない。 与田監督は、「周りが見ても十分動きに問題がないという状況になったら、状態を確認するためにも、全ての動きの確認をこちらでしてみたい」と発言していた。14日から始まる第3クールで、その全体練習メニューを数日間、消化した上で、何も問題がなければ、2軍から1軍への昇格が“推薦”され、そこで1軍昇格が検討されることになる。 武山も感じ取っていたが、根尾のポテンシャルが何十年に一人のものであることに疑いはない。この日も多くのファンとメディアが詰めかけ、例年ならば牧歌的な風景が広がる2軍キャンプの空気を一変させていた。それがスーパールーキーの持つ特別な力であり、ファンも1軍デビューを心待ちにしている。だが、本当に重要なのは開幕に間に合わせることでもルーキーシーズンの活躍でもない。 先日、野球殿堂入りした“ミスタードラゴンズ”立浪和義氏は、高卒ルーキーながら開幕スタメンに抜擢され新人王、ゴールデングラブ賞を獲得する活躍をして優勝に貢献したが、肉体は悲鳴をあげた。2年目は右肩を痛め、わずか30試合出場に留まっている。 自らの経験をもとに立浪氏は「根尾は、あまりに注目度が高すぎて、見ていて気の毒だなあ、と。必ずドラゴンズの中心になってもらいたい選手だから大切に育ててもらいたい、と先輩として思う」と語っていた。 根尾を10年間不動のレギュラーとして育成するのが中日の球団としての使命だろう。使わざるを得ない状況に根尾自身がアピールしてくるのを待っても何も遅くはない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)