<一球入魂・’22センバツ木更津総合>第1部 軌跡/3 追う展開、冷静に逆転 生活面からも成長促す /千葉
秋季県大会準決勝(2021年10月2日)で、木更津総合は八千代松陰と対戦した。上位2チームは関東大会に出場できるため、センバツを目指す木更津総合にとって、重要な一戦となった。 試合は二回表、八千代松陰が4点を先取。木更津総合は追う展開となったが、五島卓道監督は「1点ずつ取っていこうと、選手はみんな落ち着いていた」と試合を振り返る。 二回裏、芦川正真内野手(1年)が左中間を破る三塁打で好機を作ると、毛利隆仁内野手(同)の内野ゴロで1点返した。三回裏には山田隼外野手(2年)の本塁打で2点差に詰め寄った。山田は試合でチームをけん引するとともに、野球部寮の寮長をしており、生活面でも部員たちをリードする役割を担っている。 寮生と生活を共にする国広拓人コーチは「寮のキャプテンを務めることで、一段と成長してほしい」との願いを込め、山田を寮長に指名したと明かす。山田は「始めのうちは慣れなかったが、今はほとんどの部員が言わなくても動いてくれる」と手応えを感じている。 寮生の一日は午前6時半の点呼から始まる。点呼の中では寮生1人が「1分間スピーチ」をすることになっている。テーマは自由だが、前日の練習で注意されたことや、今日の練習で取り組みたいことなどを話すことが多い。狙いは人前で話し、話を聞くことで、ミーティングや練習、試合中に堂々と思ったことが言えるようになったり、チームメートの思いを推し量り、フォローしたりできるようになることにある。山田は昨秋の県大会中、自分の課題やチームとして乗り越えるべき点を話していた。 2点を追う四回2死満塁で、再び山田に打順が回ってきた。一塁側のベンチや三塁コーチャーからの「ボール球よく見て」「タイミングを合わせて」との声が耳に届いた。山田は落ち着いて球を見極め、有利なカウントに持ち込むと、4球目の変化球をレフト方向に運んだ。「抜けろ」。思いを込めた打球はスタンドに吸い込まれ、2打席連続の本塁打で逆転に成功した。 試合は8―4で快勝し、決勝に駒を進めた。五島監督は試合後、選手に向かって言った。「負けて良い試合なんてない。決勝でも気を抜くな」。県大会連覇に王手をかけた木更津総合は、決勝で拓大紅陵と対戦する。=つづく