<周永康氏逮捕> 中国の党政治局常務委員はどれくらい偉い? かつては「訴追されない特権」
12月6日未明、中国指導部は、かつて政治局常務委員を努めた周永康氏の党籍剥奪と逮捕を発表しました。公式な理由としては、職権を乱用し巨額の賄賂を受け取ったこと、親族などにも便宜を図り賄賂を融通したこと、党の機密を漏洩したこと、多数の女性と不適切な関係を持ったこと、などが挙げられています。これまで権力闘争や政治運動(文化大革命、第二次天安門事件)によって失脚したリーダーたちは存在しましたが、これほど高位の幹部が汚職・腐敗で摘発されて失脚するというのは前代未聞です。 ただし、周永康氏の失脚は2013年夏頃から囁かれ始めており、その年末には当局に拘束され取り調べを受けているという噂が広がっていました。2014年3月の全国人民代表大会(全人代)や、9月の第18期中央委員会第4回総会(4中全会)の際、周永康氏に対する処罰が公式に発表されるのではないかと言われながら、伸び伸びになっていたという経緯があります。ですから、チャイナ・ウォッチャーにとっては今回の発表に意外性はなく、「ああ、やっと出たの」という感があるのは否めません。
最高意思決定機関の最高幹部
とはいえ、やはりニュースとしてそれなりに大きく扱われているのは、上述のように、政治局常務委員が腐敗で失脚した例はこれまでなかったからです。 これまでは、政治局常務委員に刑事責任は及ばないという暗黙の了解がありました。文革時代、多くの党幹部が失脚し、中国の経済と社会は荒廃しましたが、その反省から、トウ小平は(独裁ではなく)最高指導部の集団指導を押し進めました。政治局常務委員に刑事責任を追求しないというのは、まず、そうすることにより最高幹部同士の権力闘争を防ぐという狙いがありました。また、トップレベルの人間まで腐敗しているとなると、共産党に対する中国民衆のイメージが著しく損なわれることも危惧されました。さらに、中国共産党幹部で自身にも親族にもまったく汚職の問題が存在しないという人は皆無といっていいほどで、もし厳格に汚職・腐敗を取り締まり始めたら、「そして誰もいなくなった」ということになりかねません。 中国共産党政治局常務委員会は、中国共産党の最高意思決定機関であり、そのメンバーは13億5千万の中国国民、8668万人の中国共産党員(2013年末時点)の頂点に立つ、文字通り最高幹部にあたります。周永康氏が常務委員だった胡錦涛政権では9名、現在の習近平政権では7名が常務委員となっています。実際にはトウ小平や江沢民のように、引退して一介の共産党員となった後も隠然たる影響力を持ち続ける元最高幹部の存在などもありますが、それはここではちょっと置いておきます。